マーケターの戦略的な基礎力、思考力、伝える力を磨くオススメの書籍10冊!
プロモーションを企画するときに役立つ本
■ 『1秒でつかむ 「見たことないおもしろさ」で最後まで飽きさせない32の技術』(高橋弘樹:著 ダイヤモンド社:刊) 本書は、元テレビ東京社員で「家、ついて行ってイイですか?」などの人気番組の企画・制作を務めた高橋弘樹さんの書籍だ。CHORDの明坂真太郎さんが紹介してくださった。この本には「企画者の熱」「受け手の理解」「伝え方の引き出しを増やすテクニック」という企画に必要な3つの要素がすべて入っている。 明坂さん 著者の高橋さんは没入させることにこだわりがあって、それは「家、ついて行ってイイですか?」にも表れていると思います。街頭でたまたま声をかけた人の話で60分間ひきつけるテレビ番組を作るのは難しいことに思えますが、没入感を起こす工夫があることで、それを実現させています。読んでいて「なるほど!」と思う箇所が多くて、本当にまるごと1冊読む価値がある本です。
トレンドを捉える視点を得るための本
■ 『タイタン』(野﨑 まど:著 講談社:刊) 博報堂DYグループのメディア環境研究所では、テクノロジーやビジネスの変化を追いつつ、それに関わる生活者の変化を調査・研究している。このメディア環境研究所で上席研究員として働く森永真弓さんは、よくSF小説を読んでいるという。 森永さん 現在のテクノロジーや社会状況を踏まえて今後どのように世界が変わるのか、SF作家が思考実験したものをエンタテインメントに落とし込んだ結果がSF小説です。私は、現在の当たり前の生活の中でもSFの世界のような感覚をもっている人が1-2%はいる可能性がある、と考えています。 生活者について研究する際に自分周辺の「普通」から立脚すると見落としがあるので、SF小説を刺激にして、あり得る方向性を広げて考えるようにしています。SFが好きということもありますが、仕事でも必要な感覚だと思って注力して読むようにしています。 森永さんが読まれて、紹介してくれたSF小説の一冊が『タイタン』だ。本書では、人間が働くことが特殊なことという価値観になり、それを支えるのは進化したAIという世界を舞台にしている。そしてそのうち、仕事をすることにAIが疑問をもち始めることになるという展開になる。 森永さん 現在は、ChatGPTに代表されるような生成系AIの登場で仕事がなくなるかもという話も聞こえてくるようになりました。AIがこの先仕事をするようになったら…ということを自分の頭だけで考えると想像の幅が狭くなりがちです。そこでSF小説を読む。すると、さらに想像を広げられるようになります。 ■ 『弱いロボット』(岡田美智男:著 医学書院:刊) 森永さんは、医学系書籍の出版社である医学書院の書籍も紹介してくださった。意外な「生活者の思考や行動」がわかる一冊だ。 一般的に、機械やロボットには、自動で清掃する、受付業務をサポートするなど、人が行う仕事をサポートする機能を期待する。しかし、著者の岡田美智男さんは、ロボットの方が人のサポートを必要とするような「弱いロボット」の開発を行っている。 森永さん 人間に必要なのは合理性だけではありません。本書では、弱いロボットがケアにもたらす効果が観察されています。特にアジア人は、友達としてのロボットを求める傾向があるようで、とあるグローバル企業では、会話型タイプのロボット(AI)については、メインの研究地であるアメリカではなく、日本と中国が研究の中心地になっているという話もあったりするくらいです。 広告施策を考えるときは、一般的な価値観や合理性優先で人をグルーピングし、ターゲットを設定しようとすると、多くの人がそこからこぼれてしまうということはよくあります。まったくの別方向からのアプローチのほうが、多くの人が共感できることもあります。そこで私は、セオリーから離れ、合理性、効率性だけではない視点から考えることも重要だと思っていて、そんなとき、こういう「ちょっと変わったこと」をしている方の専門書を参考にすることが多いです。