安藤優子×浜田敬子×星薫子が語る「子持ち様」問題。分断が誰をも苦しめる
子育て世代が優遇される政策や制度が広がるなかで、子育て中の親を「子持ち様」と呼んで皮肉る風潮が生まれています。燻り続ける「子持ちVS非子持ち」の対立は、どうやったら収まるのかーー。 そのヒントが、日本から遠く離れたイラン・イスラム共和国の女性たちの声のなかにありました。2023年ノーベル平和賞を受賞したイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディ著『白い拷問 自由のために闘うイラン女性の記録』には、「自分たちが望まないもの」よりも「自分たちが望むもの」をはっきりと知る主体性を持ったイラン女性たちが出てきます。本書をヒントに、ジャーナリストの安藤優子さんと浜田敬子さん、翻訳した星薫子さんが、子持ちvs非子持ちの対立の背景に迫りました。 【写真】ノーベル平和賞受賞式。イランで収監中のナルゲスさんに代わり息子と娘が…
実はすごいイラン女性のファッション
「イラン女性」と聞いて、どのような人を思い浮かべるだろうか。政情が安定せず気軽に訪れることができない国で、身につける服装にすら制限があり政治的な抑圧にも黙ってたえている人々……。このイメージは間違いとは言わないまでも「誤解されている部分も多いのではないか」と安藤優子さんは話し始めた。 安藤優子(以下、安藤):「個人的な話なのですが、飛行機でヒジャブを着けたものすごくきれいな女性の近くの席になったことがあります。1980年代頃の話です。飛行機が離陸してからすぐにトイレに駆け込んだと思ったら、超ミニスカートのハイブランドの服に着替えて出てきて『なんておしゃれな女性なんだろう! 』と思ったのを覚えています。 着陸寸前にまたトイレに行って着替えて出てきたから、そのファッションでいられたのは十数時間のことです。それでも、法律にもコーラン(イスラム教の聖典)にも抵触しない、道徳警察(ヒジャブなどの服装の戒律違反を犯した人々の取締り、逮捕を任務とする)に連行されないところで、自分は自分なんだと抵抗を続けているしたたかな女性たちもいるんだと知って痛快さを感じました」 とはいえ、服装を理由に逮捕される世界があるのは現実だ。2022年には、コート(体の線を隠すための足首までの長上着)を着てヒジャブ(イスラム教で定められている女性の髪を覆うスカーフ)も被っていたのに髪の覆い方が正しくないという理由で逮捕され、身柄を拘束されている最中に急死した若い女性がいる。その女性の死に抗議し何百もの人々が街に繰り出してデモを行った結果、さらに数百人が実弾を浴びて亡くなり、抗議運動をした6人が処刑されている。