「再生エネルギー100%」実現性は? 本気で目指す企業と世界的な取り組み
最後に紹介する方法は、実は世界で最も一般的に行われている「グリーン電力証書」(アメリカではREC/Renewable Energy Certificate、ヨーロッパではGO/Guarantee of Origin)の購入です。 上で説明してきた3つの方法では、再エネ発電施設とそれを使う消費者の施設は電線でつながっていましたが、グリーン電力証書は、利用したい再エネ電源がどこにあろうと関係なく、その“電気”を購入できる仕組みなのです。 電線でつながっていなくても、電気を買えるというのは、なんとも不思議な話ですが、この場合、商品になっているのは、電気ではなく、「再エネによる発電が○○kWh分行われた」ことを示す証明書です。再エネによる電気には、二酸化炭素を排出しない方法でつくられたという付加価値がついていますが、その付加価値の部分を電気から切り離して別の商品にしているわけです。 例えば、実際には石炭火力による電気を使っている場合でも、消費した電力分のグリーン電力証書を購入すれば、“100%再エネ電気を使った”とみなされるのです。 自分がつながっていない電力系統内の再エネ発電事業者から、“再エネ電気を使っています”と宣言する権利だけを購入する仕組みは、いささか不思議な感じがします。けれども、仮にあらゆる消費者が、自分で使った電力量と同じ量のグリーン電力証書を手に入れようとするとき、世界中の電気をすべて再エネで発電しなければ実現できないことがわかります。つまり、グリーン電力証書の購入がすすめば、世界全体の再エネによる発電量も増えていくのです。
日本の地方自治体でも目標設定の動き
以上、RE100の参加企業を中心に紹介してきましたが、それ以外の企業や国、地方自治体といった行政から団体まで、あらゆるレベルで、再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組みが行われています。 日本には1700余りの市区町村がありますが、各自治体のエネルギー自給率や食糧自給率を調査する「永続地帯」研究(環境エネルギー政策研究所)によると、2016年度は71の自治体で、域内の民生・農林水産業用エネルギー需要を上回る再エネを生み出すことに成功しています。さらに、そのような市区町村の数は年々増加傾向にあることが示されています。 都道府県別でみると、エネルギー自給率トップは大分県。2015年度末の時点で、すでに32.2%に達しています。2位は鹿児島24.9%、3位は秋田22.5%と続きます(自分の県が気になる人は「永続地帯」2016年度版報告書をご覧ください)。現在13位の福島県は自給率16.5%ですが、再エネ導入を推進して、2040年ごろにエネルギー自給率100%を達成する目標を掲げています。 他にも少しウェブ検索するだけで、実に多くの企業や学校法人が、再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んでいることが分かります(「パワーシフトした人々」参照)。 二酸化炭素の排出をなくして、持続可能なエネルギー源への転換を図ることは、世界共通の目標です。そのためのエネルギー転換は、世界の全員が取り組まなければ実現しないものです。大事なのは“みんな”ということ。もちろん、あなたも含まれています。 ---------------------------------------------------- ◎日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任 池辺靖(いけべ・やすし) 1966年生まれ。宇宙物理学の分野で日本、ドイツ、アメリカで研究に従事後、2004年より未来館にて、さまざまな科学コミュニケーション活動に取り組んでいる