Amazonの配達ドローン、米で「目視外飛行」許可
米アマゾン・ドット・コムはこのほど、ドローン(無人機)を使った配送サービスの事業拡大に必要となる認可を受けたと発表した。米連邦航空局(FAA)から、オペレーターの目視範囲を超えて飛行する「目視外飛行」(BVLOS:Beyond Visual Line of Sight)の許可を得た。これにより、航続距離が伸び、より多くの顧客がサービスを利用できるようになるとしている。 ■ 長距離飛行が可能に 配送エリア拡大 アマゾンはこれまで米国の一部の都市でドローン配送の試験を実施してきた。 今回の目視外飛行認可の取得に伴い配送エリアを拡大する計画だ。 同社は2020年に米国で航空運送事業許可を取得し、22年にカリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションでドローン配送を開始した。23年には同社のオンライン薬局「Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)」との連携で、処方箋薬の配達をカレッジステーションで始めた。 だが、これまでは、有視界内飛行での運用に限られており、事業拡大に不可欠な長距離飛行が困難だった。同社は今回の声明で「新たに取得した目視外飛行許可により、顧客向けのドローン配送を拡大するための基盤を築いた」とし、「カレッジステーションでの業務を拡大し、より人口密集地域の顧客にも提供していく」と意気込みを示している。
■ 「障害物検知・回避システム」 今回の認可取得の鍵となったのは、ドローンに搭載された「障害物検知・回避システム」である。アマゾンによると、同社はまず、FAAにシステムの技術情報や技術検証分析データなどを提出した。次にFAAの検査官立ち会いの下で実飛行デモを実施した。具体的には、飛行機、ヘリコプター、熱気球と共にドローンを飛行させ、それぞれを安全に回避する様子を披露した。FAAは、これらの情報を確認し、テストサイトでの技術実証を検証した上で許可を出した。 システムは煙突のような静止物体を認識できるほか、水平方向にある飛行機のような移動物体も検知できる。障害物を特定すると、自動で進路変更し安全に回避する。「ドローンが降下して荷物を顧客宅の裏庭に下ろす際は、周囲に人や動物、障害物がないことも確認する」(アマゾン) ■ 米国に新拠点、英国とイタリアでも開始 アマゾンは13年から「Prime Air(プライムエアー)」と呼ぶ、ドローンを使った配送システムを研究・開発してきた。19年には約2.3キログラムまでの荷物を運び、30分以内に届けるように設計した自律飛行型ドローンを披露した。これは大人の身長ほどの大きさで、垂直離陸した後、一定の高度に達すると、回転翼をほぼ垂直に傾けて水平飛行する。安全のために回転翼を覆っているシュラウド(カバー)は水平飛行時に固定翼として機能する。こうしたメカニズムであるため電力効率が高いと、アマゾンは説明していた。 しかし、その後試験中に何度か衝突・墜落事故を経験するなど困難な状況に直面した。それ以降、試作機の設計・改良を重ね、検知・回避システムを開発した。 米CNBCなどの海外メディアによると、アマゾンは24年4月にカリフォルニア州ロックフォードのドローン配送拠点を閉鎖した。同社によるとその理由は「将来を見据え、同事業の成長を持続させるためのリソースを確保すること」(同社)。 一方、同社は24年内にアリゾナ州フェニックス西部の都市トルソンに新拠点を開設するほか、英国とイタリアでもサービスを始める予定だ。25年には米国内の他の都市にも拡大する。これらを通じて、30年までに年間5億個の荷物をドローンで配送することを目指している。
小久保 重信