「那須川天心を抜く」歴史的1日…入江、並木の2人がアマチュア女子ボクシング史上初の五輪出場切符をゲット
ボクシングの東京五輪アジア・オセアニア予選が9日、ヨルダンのアンマンで行われ、女子フェザー級(54キロから57キロ)の準々決勝で入江聖奈(19、日体大)が昨年の世界選手権金メダリストのネスティー・ペテシオ(フィリピン)を4-1の判定で下して4位以上を確定させ、東京五輪の出場権を得た。また女子フライ級(48キロから51キロ)では、2018年の世界選手権銅メダリストの並木月海(21、自衛隊体育学校)が準々決勝でジュタマス・ジトポン(タイ)に5-0で判定勝ちし五輪出場を決めた。女子ボクシングは2012年ロンドン五輪から正式採用されたが、日本勢として史上初めて出場を勝ち取った。日本の女子には、開催国枠が2枠あったが、それに頼らず自力で獲得した価値ある悲願の五輪切符となった。 記念すべき女子ボクシングの五輪代表第1号となったのは、子供のころから鳥取の”天才少女ボクサー”として期待されていた入江だった。左構えの昨年の世界王者を相手に第1ラウンドからプレッシャーをかけた。左でリズムをとり、現地の実況アナウンサーが「ビューティフル」と評した強烈な右ストレートを打ち込み手数で圧倒した。ラウンド終盤には、その右でペテシオがダウン。スリップの判定だったが、入江は右手を上げてアピールした。 試合が大きく動いたのは2ラウンドだ。左手で入江の頭を押さえて右のパンチを何発も繰り出したペテシオに対して、美人の女性レフェリーが「ホールディング」の反則を取り、1点の減点を課したのだ。このラウンド、5人のジャッジのうち3人が「10-8」で入江を支持。残る2人も「9-9」のドローで大きくポイントでリードした。 後がなくなった優勝候補は最終ラウンドに前に出て、パワーを生かしたパンチを振り回してきたが、入江は冷静に足を使った。サイドステップを踏み、被弾を避けて、確実に右のカウンターだけを合わせていく頭脳ボクシングである。 運命の判定を待つ。 「ブルーコーナー……」とアナウンスされた瞬間、入江は両手を突き上げて喜びを表現。リングを下りる際、会場の応援団にもう一度右手を突き上げた。 「今までの試合で、1番嬉しい勝利でした。コールされたときはとにかく嬉しかったです。相手は、パンチ力がありましたが2ラウンド目でレフェリーが減点を取ってくれたことで自信をもって試合を進めることができました」 ペテシオは昨年の世界選手権の準々決勝で敗れた宿敵だった。