「那須川天心を抜く」歴史的1日…入江、並木の2人がアマチュア女子ボクシング史上初の五輪出場切符をゲット
「ここまできたら、ファイナリストになりたいので次の韓国(の選手)に何としてでも勝ちたいです」 入江は、次の準決勝を勝ち決勝戦へ突き進むことを誓った。 小学生の頃、母が本棚に並べていたボクシング漫画の名作「がんばれ元気」を読んで興味を抱きボクシングを始めた。主人公は少年ボクサーで共感を覚えた。鳥取米子のジムへ通い始めるとメキメキと頭角を現した。2014年、2015年と15歳以下の全日本アンダージュニアで連覇。”天才少女ボクサー”として有名になり、米子西高へ進むと3年で、女子高校生ながら全日本選手権で優勝した。東京五輪開催が決まったときから掲げた目標が「東京五輪で金メダル」。夢を叶えるためのパスポートを手にした。 日本女子ボクシング界にとっての歴史的な朗報はさらに続いた。2018年の世界選手権で銅メダルを獲得。「もっともメダルに近いオンナ」と呼ばれていた”エース”の並木がジトポンに快勝。ベスト4進出を決め東京五輪出場切符をゲットしたのだ。 “小さな巨人”並木は、第1ラウンドからタイ人を翻弄した。153センチの小さな体を前後、左右に小刻みに敏捷に動かしながら、ここぞのタイミングで、火の玉のようにインサイドに飛び込み、右フック、左ストレートを次々ヒットさせていく。揉み合うような密着戦になると離れ際にも手を出す。磨いてきた海外で勝つためのテクニックである。 第2ラウンドに狙いすました右フックを叩き込むと、拳を突き上げた。続けてトリッキーな動きを見せて余裕のアピール。完全に主導権を握った。1、2ラウンドと取られたタイ人が最終ラウンドに勝負をかけて前へ出てくるが、並木も引かずに激しい殴り合いとなった。並木の左ストレートが、タイ人の顔面を何度も捉え、判定は「5-0」の圧勝。ジャッジの2人は、パーフェクト採点だった。 幼稚園の頃から“神童”キックボクサー、那須川天心と極真空手の支部で一緒に練習していたことで知られる。その幼馴染の天心とは、2度対戦して2度負けたが、今でも親交が続く。 「(天心は)格闘技界で有名になって引っ張ってくれている。憧れというよりも抜かしたい」 遠山中学1年の時、一度「普通の女の子に戻りたい」と考え、格闘技から距離を置いたことがある。でも「その生活では物足りず」ボクシングの世界に帰ってきた。 「ボクシングで一番上を目指す。東京五輪での金メダルはもう夢ではなく目標です」 この日、並木は、ヨルダンの地で、明確な目標として定めた東京五輪の金メダルへ向けてのスタートラインに立った。