「ただ周囲にあいづちを打ってもらう」だけでアイデアが続々!?メタ認知的<あいづちによる発想促進効果>
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します! 【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』 * * * * * * * ◆「うなずきながらあいづちを打つ」ことの効果 ブレインストーミング法をはじめとするさまざまな発想促進法の中でも、とりわけ手軽でシンプルな方法として、聞き手に、うなずきながら熱心にあいづちを打ってもらうという方法があります。 ある臨床心理学の研究で、セラピストがクライアントの話を聞く時に、頻繁に「うんうん」とあいづちを打ったりうなずいたりすることによって、クライアントがたくさんのことを話してくれるようになることが報告されていました*1。 聞き手のあいづちには、このように発話つまり話すことを促進する効果があります。 ちなみに、あいづちを打つ際に、うなずかずにあいづちだけを打つと、かなり不自然です。一度やってみるとわかるのですが、頭部を動かさないように固定して「うんうん」と言ってみるとどうでしょう。なんだか言いにくくて違和感を覚えませんか。 そのため、あいづちを打つ時には、うなずきとセットにした方がよさそうです。
◆あいづちを打ってもらうことで「考える意欲が湧く」 さて、実は、あいづちの効果は発話の促進だけではないのです。発話の促進に加えて、あいづちには、発想を促進する効果があるのです。私たちの一連の「あいづち実験シリーズ」では、このことが明らかになりました。 実験では、「日本社会の高齢化がさらに進むと、どんなことが起こるか」「日本のごみ問題を解決するには、どうすればよいか」といった発想課題に対して、実験参加者にアイデアを出してもらいました。 その際、実験者が、「うんうん」といったあいづちを頻繁に打つと、打たなかった場合に比べて、発想量つまりアイデア産出量が大幅に増えたのです*2。 また、別の実験で実験参加者に主観評価を求めると、聞き手にあいづちを打ってもらうことにより、話し手は、「自分の考えに関心を持ってくれている」「自分の考えに同意してくれている」「自分の考えをほめてくれている」と感じ、考える意欲が湧くことがわかりました。