「ただ周囲にあいづちを打ってもらう」だけでアイデアが続々!?メタ認知的<あいづちによる発想促進効果>
◆純粋にアイデアを生成するプロセスに対して働く この結果から、アイデアを引き出すためには、聞き手の態度がとても重要な役割を果たすと言えます*3。 そして、発想課題の種類に着目すると、「どうすればよいか」を考える解決課題よりも、「どんなことが起こるか」を考える予想課題の方が、あいづちの効果が顕著に現れました。なぜ、このような違いが生じたのでしょうか。 予想課題では自由にアイデアを出せばよいのですが、解決課題では、「解決に結びつくアイデアを出す」という条件でアイデアをチェックすることが必要になります。いわば、条件つきの発想課題となります。 したがって、あいづちによる発想促進効果は、チェックをかける前の、純粋にアイデアを生成するプロセスに対して働くのではないかと考えられます。 ところで、この結果に対して、「あいづちが発想を促進したというより、あいづちをあまり打ってもらえないことが発想を抑制したのではないか」と考えることもできるでしょう。 そこで、補足実験として、発想のベースラインを調べることにしました。つまり、アイデアを実験者に向かって話す代わりに、自由に書き出してもらう方法を取りました。 時間制限は話す場合と揃えました。すると、その際の発想量は、あいづちをあまり打たない場合とほぼ同じになりました。このことから、あいづちを打たないことが発想を抑制したのではなく、あいづちを打つことが発想を促進したのだと解釈できます。
◆肯定的とは言えないあいづちを打たれてしまうと… なお、どんなあいづちでも頻繁に打てばよいのかというと、そうではありません。あいづちの種類についての配慮も必要です。 あいづちの種類について調べてみると、「うんうん」「そうそう」「それいい」といった肯定的なあいづちは、予想課題において発想を促進してくれるのですが、「うーん」「ふーん」「はーん」などの肯定的とは言い難いあいづちには、そのような効果はありませんでした。 こうした肯定的とは言えないあいづちを打たれると、「私の話に関心がないのだ」「私の考えに賛成ではないのだ」と考えてしまい、考える意欲も高まらず、発想促進効果も望めないようです*4。 このように、聞き手に協力を求めて、効果的なあいづちを意識的に打ってもらうことによって、発想を豊かにすることができます。ただあいづちを打つだけという、これほど手軽な発想支援法を使わない手はないでしょう。 ーーー *1. Matarazzo, J. D., Wiens, A. N., Saslow, G., Allen, B. V., & Weitman, M.(1964) Interviewer mm-hmm and interviewee speech durations. Psychotherarpy, 1, 3, 109-114. *2. Sannomiya, M., Kawaguchi, A., Yamakawa,I., & Morita, Y. (2003) Effect of backchannel utterances on facilitating idea-generation in Japanese think-aloud tasks. Psychological Reports, 93, 41-46. *3. 三宮真智子 (2004)「コプレズンス状況における発想支援方略としてのあいづちの効果 思考課題との関連性」人間環境学研究、2, 1,23-30. *4.三宮真智子・山口洋介(2019)「発想に及ぼすあいづちの種類の効果」心理学研究、90,3,301-307. ※本稿は、『メタ認知』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
三宮真智子