なぜ浅野拓磨はパルチザンの電撃退団を決断したのか…「度重なる給与の未払い」…クラブ側は反論、法廷闘争の構え
だからこそ、中国やサウジアラビア、トルコは結果を残したと自負する浅野にとってステップアップにはならない。最近になってパルチザン側から提案され、浅野サイドが拒否したと報じられたUAE(アラブ首長国連邦)のクラブへの移籍も然り、だ。 最終的には選手が合意しなければ移籍は成立しない。より高いレベルで挑戦したい浅野の希望を理解した上で、それでもUAEなど移籍金を優先させた移籍を望むパルチザン側の考え方が「不誠実な対応」と映り、給与などの未払いを介して不信感を募らせていた浅野を、シーズン終盤での電撃退団へと駆りたてた可能性は否定できない。 自主的な退団が認められ、所属クラブがない選手となれば、浅野は移籍金が発生しない状態で新天地を探せる。アーセナルへ支払った移籍金など、浅野に対するこれまでの投資が無に帰すだけに、パルチザンは声明のなかでさらに不信感を募らせている。 「選手が自分の意思だけでなく、影響力をもっていると思われる第三者の意見に基づき、性急に行動を取ったことは明らかだ。したがって私たちは、彼が自分の地位について語ったすべての発言を、根拠のない脅迫的なものだとして拒否する」 第三者の代表格が、資金を必要としない有利な条件で浅野を獲得できる新天地となるだろう。クラブ全体のイメージをダウンさせ、今後の補強戦略にも影響を与えかねない状況を生み出すだけに、パルチザン側も絶対に譲らない態勢で臨んでくる。 訴えを受けたFIFAが浅野の契約違反を認定すれば、最長で2年間の出場停止処分が下される可能性もあると報じたメディアもある。状況が泥沼化するおそれすら出てきたなかで、浅野のSNSには今シーズンの活躍に感謝するパルチザンのサポーターからクラブ側の非礼を謝罪し、退団を支持するリプライが数多く寄せられている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)