なぜ浅野拓磨はパルチザンの電撃退団を決断したのか…「度重なる給与の未払い」…クラブ側は反論、法廷闘争の構え
一方でカップ戦では決勝へ進み、今月25日にレッドスターとの大一番が待つ。チームが一丸となってタイトル獲得を目指す矢先に届いたエースの唐突な退団表明に対して、パルチザンは声明で給与の未払いを「事実無根だ」と糾弾している。 浅野とパルチザンの主張が真っ向から食い違っているが、不特定多数に共有されるブログやSNSを介して、浅野が事実に反する投稿を発信するメリットはない。得点王獲得も視野にとらえた、シーズン大詰めのタイミングを考えればなおさらだ。 さらに気になるのが、浅野が投稿のなかで言及した「不誠実な対応によりクラブからのリスペクトを感じられなくなってしまった」の箇所の真意となる。 浅野はパルチザンと2022年夏まで契約を残している。しかし、新型コロナウイルス禍で財政状況が悪化したパルチザンは今夏のタイミングで、主力選手数人の売却を決断したと先月下旬になってセルビア国内のメディアで報じられた。 ゴール量産で一気に価値が高まった浅野も候補の一人に入っている。パルチザン側はエースの売却に400万ユーロ(約5億2600万円)の金額を設定したとされ、実際に中国、サウジアラビア、トルコのクラブからオファーが届いたという。 しかし、浅野自身はヨーロッパの5大リーグへの再挑戦を視野に入れて、スーペルリーガでの再出発を決めた。パルチザンへ感謝の思いを抱きながらも、スーペルリーガそのもののレベルを踏まえて、日本代表に招集された3月にはこんな言葉を残していた。 「結果を出していても、周りからはどうしても『セルビアだから』と見られるのは多少あると正直、自分のなかでは感じています。それでもセルビアで一発結果を残して、ステップアップしようとプレーしている気持ちが、反骨心を生み出している」 今シーズンの公式戦であげた21ゴールの源泉をたどっていけば、武者修行先のドイツで不本意な日々を送り、結果として一度も公式戦のピッチに立てないままアーセナルでの挑戦をも閉ざされた自身のキャリアへの反骨心に行き着くと浅野は明かした。