米欧の金利差拡大へ、トランプ氏のFRBバッシング再燃させる恐れ
日ごとに弱体化
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「欧州経済は日ごとに弱くなっているようだ」と述べ、「欧州は米国よりも利下げを切望しており、当面は金利差が拡大するだろう」と指摘した。
FOMCの政策金利はすでにECBの中銀預金金利を1ポイント余り上回っており、ドルは今年に入って対ユーロで5%上昇している。市場の予想では、金利差は来年2ポイント余りに拡大し、ドル高がさらに進む可能性がある。
欧州は近年、大幅な成長を達成するのに苦慮しており、エコノミストは2025年までその傾向が続くと見ている。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後のインフレに対処するための金利上昇は、米国よりも欧州に大きな打撃を与えた。ロシアによるウクライナ侵攻後、欧州のロシアへのエネルギー依存も景気拡大の逆風となった。関税を引き上げるとのトランプ氏の脅しは、欧州経済だけでなく中国など他の主要貿易相手国も対象としており、欧州大陸の成長に対するさらなるリスクとみられている。
一方、米国はコロナ禍前のトレンドを上回るペースで成長を続けている。エネルギーの自給に加え、住宅所有者のほとんどが固定金利でローンを組んでいることから、FOMCの引き締め政策が消費にそれほど大きな打撃を与えることはなかった。
昨年末、エコノミストは2024年の米成長率をわずか1%と予測していた。しかし、米経済の驚くべき底堅さは、トランプ次期大統領の関税と減税がインフレを再燃させかねないとの懸念と相まって、2025年の利下げ観測を着実に後退させている。
より長期により高く
ECBと同様、FOMCも今月0.25ポイントの利下げを実施すると予想されているが、市場は現在、来年の利下げは3回にとどまるとみている。一方、欧州ではもっと多くの利下げが予想されている。
トランプ氏の政策によっては、この乖離がさらに悪化する可能性もある。インフレを促進する関税は、FOMCに金利をより高水準でより長期に維持させ、結果的に一段のドル高を招く可能性がある。