『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』はなぜ伝説となり、商業化したか。著者・小原晩に訊く
その時々にどう感じて、どう書くか。エッセイでも小説でも変わらない、小原の創作姿勢とは
─この2年で、自分発信の創作だけでなく、お仕事の依頼を受けることも増えているかと思います。制作において何か変わったことはありますか? 小原:まだ書籍は2冊目ですが、チームでつくることの難しさはずっと感じています。単純にコミュニケーションの量も増えますし、大人同士の会話でよくある「行間を読む」が苦手で。私が行間を読もうとすると何も喋れなくなって空白だけがそこに生まれてしまうんです……。 ─エッセイ以外にも小説など別の表現にも挑戦されてきたと思うのですが、書くことが浮かばないとかスランプになることはありませんか? 小原:画家のデイヴィッド・ホックニーの展示を見に行ったときに、同じモチーフを何度も描いているのを見たんですよね。描かれた時期によって画材が変わっていて、違う作品として成立していて、「そうだよな」と感じたんです。 同じ話でも、エッセイで書くのと小説で書くのは全然違う。いま書くのと10年後に振り返って書くのでも全然違う。だから、1回書いたことはもう書いちゃいけないなんてないと思いました。そういう意味では、書くことが枯渇することはないだろうなと思います。 それに、人間、時が経っても人生におけるモチーフみたいなものってそんなに変わらないんじゃないかとも思うんです。私はたぶん、これからも歩くことが好きだしお湯に浸かることが好き。きっと何回もそういうことを書くと思う。大事なのは、その時々にどう感じて、どう書くかなのかなと思います。 ー商業版になったことによって、『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』はこれまで以上に広い人に届いていくと思います。こんな感想がほしい、こんなふうに読み解いてほしい、といった想いはありますか? 小原:好きなように読んでほしいと思います。読者が私の作品を読んで感じたことがすべてだと思うので。 ー代表作とも言える『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』が巣立っていって、小原さんご自身はつぎの目標を考えていらっしゃるのかなと思います。今後についてのビジョンを教えてもらえますか? 小原 :いまは小説と詩に目が向いています。エッセイを書くことに関してもですが、まだいろいろなことが始まったばかりなので、こつこつと積み重ねていけたらいいなと思っています。
インタビュー・テキスト by 白鳥菜都 / 撮影 by 山口こすも / 編集 by 生駒奨