パリ五輪閉幕も IOCが選手への誹謗中傷を非難...叱咤激励との境界は?為末大「2件ならいいけど、500件来たらやっぱりくる」 安藤美姫「選手もミスしたくて、ミスしていない」
応援しているからこそミスへの厳しい批判をしたくなったり、勝負事なので結果に文句や不満が出るのは普通、などの声が上がっている。プロスケーター・元フィギュア世界女王の安藤美姫氏は「例えば、いいところも書いてくれるとか。“こういう思いでやっていたのだと思うけれども、僕は私はこれだけ応援してきたからこそ、一緒に悔しい思いが込み上げてくる”とか。寄り添いながらの言葉だったら、ネガティブに言われても受け止められる」と提案。 さらに「選手もミスしたくて、ミスしていない。ロボットではないところは、分かってほしい。同じ人間だけど、ベストを尽くすのは当たり前でやってきて、何が起こるか分からないところで感動を生んだりとか、思わぬ失敗に繋がってしまう。そこを同じ一人の人間として受け止めてくれると、心ない言葉だけで終わらないのかなと思う」と付け加えた。
■パリ五輪での誹謗中傷
パリ五輪での誹謗中傷には、柔道で負けて泣いた選手に対して「自己中心的で、注目されてりゃ機嫌いい。厄介な人」、競歩を辞退した選手に対して「贅沢。身勝手でしょ」「辞退してこの結果とは笑える。帰ってくるな。」、バスケ男子の審判を務めた女性に対して「誤審で日本が敗北。性能が劣るやつは審判するな」などが見られた。
誹謗中傷の問題について、アスリートにはどのようなケアを行っているのか。スポーツ心理学博士の布施努氏は「ケアという面では、レジリエンスという考え方がある。たった一人でも自分のことを応援してくれる人がいるのが分かるといい。そうするとコーチの方や監督の方たちとのリレーションシップが非常に大事になってくる」と説明。 一人の応援の声だけに耳を傾けるのは難しいのではないか。布施氏は、競歩の選手を引き合いに「個人の判断ではなく、コーチ、協会、連盟などの判断で最後は棄権することになった。つまり自分でコントロールできないところで言われてしまうと、相当厳しい状況になってしまうとは思う」と答えた。 為末氏は「競歩は、辞退して補欠の人がかわいそうじゃないかと言うけど、その時は彼女しか権利を持っていなかった。事前の情報は分からないけど、おそらくこうなんじゃないかというものが9割以上。それは違うから説明したいと思っても、(批判の)量が呼び水になるので、分かってもらえないんだなと距離をとる。だんだんみんな押し黙っていくのが現状だ」との見方を示した。 そもそも、選手にはSNSを見ないことを推奨しているのか。布施氏は「見たらこういうことが起きるということを、オリンピックに行く前から考えるトレーニングや、リスクマネジメントはやっている」と述べた。