7.2万人の子どもがサッカー継続困難? 横浜FM守護神に課せられた使命「発信しなければ」【インタビュー】
プロサッカー選手だからこそ持つ発信力
ポープ自身も、3年以上に及ぶ支援活動を通じて「現実を知ったという感覚がある」と率直な心境を吐露する。「僕たちが取り組もうとしている課題は、サッカー界どころか社会の問題」と状況改善が決して一筋縄ではいかないことも痛感。それでも、「自分にできることをできる範囲内で本当に地道にやっていくしかなくて、活動を継続することに意味があるのではないかと思う」と前を向く。 より良い未来に向けて支援の輪を少しでも大きく広げていく。そのためには、“認知”が欠かせない。ポープは、「僕たちだからこそできると思う」とプロサッカー選手の発信力を信じている。こんなエピソードを教えてくれた。 「アル・アインとのAFCチャンピオンズリーグ決勝第2戦で敵地(UAE)に遠征した時でした。駆けつけてくれたサポーターの団体の代表者が、みんなで集めたお金が余ったからと『love.futbol Japan』に寄付してくれたんですよ(※)。僕からは特に何も言ってなかったのに。すごく心が温まりました。恐らく、僕が横浜F・マリノスに来ていなければ起きていなかったんじゃないかと思います。 だからこそありがたかったですし、善意ある行動を喚起できる立場に僕たち選手はいるんだと実感しました。選手の存在を通して活動について知り、行動を起こしてくれたサポーターが実際にいたわけですから。そういう回数を増やしていくべく、支援やチャリティーについてもっと積極的にSNSなどで発信していかなければならない。そこは大事なポイントだと感じていますね」 さらに、支援活動を続けてきた選手として、これからプロ選手のキャリアを積み上げる“後輩”たちへメッセージを送る。 「やっぱり思うのは、ただのサッカー選手で終わってほしくないってこと。社会に与える影響力が強い立場なので。一昔前みたいに、『ただサッカーをやっていました』ではいけないのではないかと。ペラペラではなくてちゃんと厚みのある、広い視野でさまざまなことにアプローチできる人間でいてほしい。サッカーだけやっていればいいではなくて、それ以外の活動が結果的にサッカーにつながると僕は思っています」 日本サッカー界がこれからも進歩を遂げていくなかで、1人でも多くのサッカーファミリーがプレーできない環境に取り残されず、競技環境が持続可能なものとなるために――。この競技を愛する1人1人にできることがある。 ※編注:「love.futbol Japan」への寄付金は、12月8日に行われるJ1リーグ最終節に支援家庭の子どもたちを招待するために活用される予定となっている。 [プロフィール] ポープ・ウィリアム/1994年10月21日生まれ、東京都出身。東京ヴェルディJrユース-東京ヴェルディユース-東京ヴェルディ-FC岐阜-東京ヴェルディ-川崎フロンターレ-大分トリニータ-川崎フロンターレ-ファジアーノ岡山-川崎フロンターレ-大分トリニータ-FC町田ゼルビア-横浜F・マリノス。アンダー世代(U-19、20、21、22)では日本代表も経験。高い身体能力と長い手足を生かしたプレースタイルが特徴で、2023-24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではPK戦の殊勲のセーブでクラブ史上初となる決勝進出に貢献した。
FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治 / Ryoji Yamauchi