森三中・大島2度の流産で絶望。44歳で知った「不妊治療」の現実
森三中・大島2度の流産で絶望。44歳で知った「不妊治療」の現実
国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、日本において不妊の検査や治療を受けたことがある、あるいは現在受けている夫婦は全体の22.7%にのぼり、我が国の不妊治療実施数は世界一だそうです。それなのに、体外受精をはじめ不妊治療の成功率は低く、その原因は妊娠に関わる情報不足だと考えられています。そこで今回は、不妊治療を経て出産に至った大島美幸さんと産婦人科専門医である長谷川朋也先生に、不妊治療や妊娠・出産に関する基礎知識について対談していただきます。 【動画付き】森三中・大島(44)が苦悶「高齢妊活」の実態
「妊娠すれば、出産できると思っていた」焦りや不安を感じた当時の葛藤
長谷川先生: 現在までの妊活の経験について教えてください。 大島さん: 1人目の時は人工授精でしたが、2人目妊活中の現在は仕事をしながらクリニックに通い、体外受精を行っています。 長谷川先生: 仕事と妊活を両立しているのですね。 大島さん: 今は採卵を繰り返しているのですが、仕事とのスケジュール調整が難しく、挫けそうです。 長谷川先生: 仕事をしながら卵が育つタイミングを計るのは難しいですよね。最初の妊娠について教えていただけますか? 大島さん: 最初の妊娠が27歳の時でした。妊娠の発覚には本当に喜んで、すぐに両親に連絡したことを覚えています。 長谷川先生: 妊娠が発覚し、うれしかったのですね。 大島さん: はい。ただ、8~9週目の健診で赤ちゃんの心臓が止まっていると分かり、流産を経験しました。 長谷川先生: つらかったですよね。 大島さん: 当時は妊娠すれば出産できると思っていたので、びっくりして涙が止まりませんでした。 長谷川先生: そのあとはどうでしたか? 大島さん: 29歳の時に次の妊娠が発覚しました。それまでの2年間で妊活について学び生活も整えたのですが、同じように8~9週目の健診で流産を経験しています。 長谷川先生: できる限りのことをした上で、再び流産を経験されたのですね。 大島さん: はい。できることはしたのですが、仕事のリズムを変えず月に1回は海外にも行っていたので、それが良くなかったのかなと思います。 長谷川先生: 卵の成長に関わる女性ホルモンの分泌は、住む場所や仕事の環境などの変化に敏感です。その影響もあったかもしれませんね。大島さんが妊活休業を決意したきっかけを教えてください。 大島さん: 2度の流産を経験しましたが、私と旦那の子どもが欲しいという思いは変わりませんでした。仕事をしながら妊活を続けることにも不安があり、妊活に集中したいと考えたことがきっかけです。 長谷川先生: 日本で妊活休業を取得している人は10~15%だと言われています。25%の人は仕事と不妊治療の両立が難しく離職されているそうです。妊活休業制度がある企業は10%程度だと言われているので、周囲の理解も大切だと思います。 大島さん: 周りの理解や協力も大事ですよね。仕事を中心に考えている女性も増えていると思うのですが、出産は早い方が良いのでしょうか? 長谷川先生: そうですね。妊娠力のピークは20代半ば~後半です。卵子の数も生まれた時に決まっていて年齢とともに減少していくため、妊娠・出産はできるだけ早い方が良いと考えられています。 大島さん: 高齢出産についても教えていただけますか? 長谷川先生: 一般的に35歳以上の女性が初めて出産できることを高齢出産と言います。 大島さん: 35歳は感覚的に若いと思うのですが、どうなのでしょうか? 長谷川先生: 赤ちゃんの成長を支えるのは母体からの血液です。そのため、女性の体の中では血管に大きな変化があります。高齢になると血管が伸びづらくなり、妊娠糖尿病や妊娠高血圧のような血管系の病気になりやすいです。 大島さん: 出産の時にもリスクはありますか? 長谷川先生: 年齢とともに産道が固くなると赤ちゃんは出にくいため、帝王切開の確率が上昇することも分かっています。帝王切開による感染にも注意が必要です。 大島さん: 不妊とはどういった状態なのでしょうか? 長谷川先生: 不妊症は、妊娠を希望され通常の夫婦生活を1年間しているにもかかわらず、妊娠しないことを言います。 大島さん: なるほど。不妊の原因は男女どちらに多いのですか? 長谷川先生: 男女両方に原因がある場合は35%、女性だけにある場合が37%、男性のみの場合が8%、その他は原因不明だと言われています。男性に原因がある可能性は35%+8%=43%であり、受精卵には男性のDNAも50%含まれていますが、不妊治療に理解がない男性も多いのが現状です。 大島さん: 男性の理解を得るのは難しいとは思いますが、最近は一緒にクリニックへ通っている夫婦も多く、私が妊活を始めた頃より情報が浸透していると感じます。 長谷川先生: 2022年の4月から不妊治療が保険適用になった影響も大きいですね。不妊治療を開始するためには、夫婦で受診し同意書を書く必要があるので増えているのかと思います。 大島さん: 良い傾向ですね。妊活のために控えた方が良いことはありますか? 長谷川先生: 男性に関しては、サウナのように下半身を温めるような行動は精子を減らし、運動率も下げるというデータがあるので気を付けてください。 大島さん: 温めない方が良いということですね。 長谷川先生: はい。喫煙や飲酒にも注意が必要です。喫煙ほどではありませんが飲酒量の多い人は節制も考えてください。 大島さん: 飲酒量の目安はありますか? 長谷川先生: 一週間でワインであれば5杯、ビールは大瓶2本が目安です。それ以下の量であれば問題ないと思います。 大島さん: 女性が注意することはありますか? 長谷川先生: 7時間以上の良い睡眠をとってください。流産を防ぐ効果があるビタミンDは日光を浴びると活性化するので、生活のリズムを整えることも大切です。運動に関しては、週に2時間半程度の軽い運動が推奨されています。 大島さん: 食事に関しても気を付けることはありますか? 長谷川先生: 食べ物の栄養が体を作るので、タンパク質や脂質、炭水化物の割合に気を付けてください。痩せすぎは血流の不足、太りすぎはホルモン分泌の低下につながり、卵が育たないこともあるので適正体重を維持することが大切です。不足すると赤ちゃんに奇形が発生しやすくなると言われている葉酸の摂取も大切です。食品に含まれていることは少ないので、サプリメントなどで摂取していただければと思います。 大島さん: 流産しやすい人の特徴はあるのでしょうか? 長谷川先生: 2回以上流産を繰り返すことを不育症と言い、その原因には受精卵や夫婦の染色体異常、糖尿病、甲状腺の機能低下、子宮筋腫などがあると言われています。 大島さん: 気を付けることがたくさんありますね。私も子宮筋腫があったので妊活休業に入ってすぐに治療をしました。 長谷川先生: なるほど。その後に妊娠されたと思うので、子宮筋腫の影響があったのかもしれませんね。 大島さん: そうですね。妊活で検査した時に甲状腺の治療も必要だと分かったので、子どもが欲しいと思ったら、まず検査することが大事ですね。 長谷川先生: そうですね。女性の場合は子宮頸がんの検診もあると思うので、気になることがあれば相談することも大切だと思います。 大島さん: 出産を希望した場合、主にどのようなことを検査するのでしょうか? 長谷川先生: 女性は子宮の病気の有無に加えて、卵管の検査やホルモン採血、エコーで卵巣の排卵状況などを検査します。 大島さん: 検査が多くて大変です。 長谷川先生: そうですね。今年の6月からは卵巣に残っている卵子の数を調べるAMH検査(卵巣予備機能検査)も保険適用になっています。 大島さん: 私も調べました。男性の場合はどうですか? 長谷川先生: 男性は主に採血と精子の検査です。精子の数や運動率、奇形率を調べます。 大島さん: 検査にかかる費用はどのぐらいなのでしょうか? 長谷川先生: 女性の場合、一通り検査すると2~3万円くらいです。男性は3000~1万円程度になりますね。大島さんが検査した項目を教えてください。 大島さん: 先生に説明していただいた検査は、ほとんど全部受けました。卵管の検査は本当に痛くてびっくりしました。何であんなに痛いのですか? 長谷川先生: 子宮の中に造影剤を入れるので子宮がパンパンになってしまうからです。 大島さん: なるほど。女性が受ける検査は、痛いことが多くありませんか? 長谷川先生: そうですね。男性の場合、採血での痛みはありますが精子検査に痛みはありません。身体的に負担がかかる検査は女性に多いと思います。 大島さん: 私も旦那には「妊活、妊娠、出産は1回ずつ交代できたらいいのに」と冗談を言ったりしていますね。 長谷川先生: 本当の意味で、それが男女平等ですよね。 大島さん: 男性にも女性の痛みを知っていただきたいですね。