映画【推しの子】“絶妙すぎる配役”決まった背景。プロデューサー語る「リアルさ」を重視したキャスティング
これは本当に安い言葉に聞こえるかもしれませんが、今回は絶対に妥協したくなかったんです。さまざまなポイントで妥協したら絶対に作品が良くならないと思いました。やっぱり企画を立ち上げた私が、腑に落ちてない点があると、それが周りにきっと伝わってしまうと思っていました。 確かに一度断られて、もう1回行くっていうのはあまりないです。ただその機会をいただけたのなら、その話し合いで絶対やっていただけるように、ご納得いただきたいと思っただけです。
■大人な事情のキャスティングは一切ない ――アクア役の櫻井海音さんや、ルビー役の齊藤なぎささんなどのキャスティングも、適材適所の人たちをキャスティングしたように見えるのですが。 そこはやはり芸能界にいる人間が芸能界のことを描くので、お芝居できるのは当たり前なうえで、彼らのキャラクター、生い立ち、バックグラウンド、性格や素養など、すべてが画面ににじみ出るようにしたかったんです。 だから有馬かな役の原菜乃華さんも、幼少から活躍されている点、声が魅力的な点、そういうところが重なってくるんですよ。ドキュメンタリーじゃないですが、リアルさや説得力を持たせられる。
(櫻井)海音くんもそういった影の部分を感じさせられるところに魅力がありましたし、ルビー、あかね、MEMちょ他、ひとりひとりを丁寧にキャラクターを当てはめていったという感じですね。 「恋愛リアリティーショー編」だったら、実際に恋愛リアリティーショー経験者の方にお願いしています。そういうところは結構狙いました。 正直申し上げると、キャスティングの際には知名度とか、そういう点に頼りたくなるものですが、今回はリアルさだったり、素養を重視しました。だから大人の事情的なキャスティングは一切ないと言えます。
――最後に映画の見どころは? (主人公の宿敵となる)カミキヒカルという役をどなたにやっていただくかというのが、最後までかなりこだわったポイントでした。 やはり二宮和也さんの芝居の説得力ですよね。外側からも内側からもカミキヒカルのオーラにあふれていた。 ■原作のパワーに吸い込まれる作品に 現場で撮影を見ているとき、ふと「この芝居はきっと今後も忘れることはないんだろうな」と思えたんです。今回はそういったカットの積み重ねが映画で表現されています。
映画全体を通して、きっと観た方も【推しの子】という原作のパワーに吸い込まれるような作品になっていると思います。ぜひご覧になっていただけると嬉しいです。 インタビュー前編:映画【推しの子】を“売れっ子MV監督”が撮る狙い
壬生 智裕 :映画ライター