「キャンセルは“電話一本”のみ、補償もない」 11月施行“フリーランス法”に関する報告会で「クリエイターの実情」が明らかに
権利を行使すると周囲との軋轢が生まれる現状
一般社団法人「日本ベリーダンス連盟」理事の山本和泉氏は、アンケート結果でも問題視された「キャンセルフィー」について、フリーランス側からの実情を語った。 「イベントへの出演が予定されていても、『集客ができなかった』『客の評価が低かった』などの理由から、電話一本でキャンセルされることがある。キャンセル代などの補償もない。それでも、次から仕事がもらえなくなるおそれがあるために、クレームを入れることもできない」(山本氏) 今年1月、ベリーダンスを題材にした漫画『セクシー田中さん』の作者であった芦原妃名子さんが死去した。山本氏は「芦原さんは著作者人格権について深く理解しており、その権利を行使したからこそ、周囲との軋轢(あつれき)が生じていた」と指摘。 「このような痛ましいことが、またあってはならない。法律は、全員が守らなければ効果を発揮しない」(山本氏)
「フリーランスは生活を人質に取られている」
イラストレーターの小池アミイゴ氏は「自身も周囲のイラストレーターも、自分たちが『労働』を行っていることに無自覚になりがちだ」と語る。 「周囲から『好きなことを仕事にできていいですね』と言われるが、社会から切り離されているように感じて不安を抱くこともある。フリーランス法ができたのはありがたい」(小池氏) 一般社団法人「日本音楽著作権協会(JASRAC)」の理事も務める、ミュージシャンのエンドウ.氏は「音楽業界は非常に前時代的」と指摘。 「楽曲を発注されたので、リテイクを経て複数パターンを作った末にリリースできる状態の曲を作ってもキャンセルされてお蔵入り、ということはよくある。クライアント側の圧倒的な地位の優越により、望まぬ契約をさせられる問題が残っている」(エンドウ.氏) フリーライターの小泉なつみ氏は、ライター業は先輩ライターとの「師弟関係」や担当編集者との「一対一の関係」という閉塞(へいそく)的な環境に取り囲まれているため、ハラスメントなどの問題が発生しやすい、と述べた。 「フリーランスは目の前の生活を人質に取られている状態。たとえば編集者に対して疑問や不満を抱いても、なかなか口に出せない」(小泉氏) また、現状、日本のフリーランスは契約や取り引きに関する法務作業や確定申告に代表されるような経理作業を自分自身で担う必要がある。小泉氏は、多くのフリーランスが法務や経理に追われて創造性・生産性が下がっているために、韓国のような法律が日本でも必要にされていると指摘しする。 FLJの専務理事と日本俳優連合の代表理事・副理事長を務める池水通洋氏は「アンケートを通じて、多くの俳優たちが最低賃金を下回る状態で働いていることが明らかになった」と語った。 「外国では作品がソフト化するなど二次利用された際にも俳優に支払いが行われるが、日本では出演料の一回きり。その出演料の金額も、どんどん下がってきている」(池水氏)