「キャンセルは“電話一本”のみ、補償もない」 11月施行“フリーランス法”に関する報告会で「クリエイターの実情」が明らかに
クリエイターらが希望する契約条件とは
FLJは文化芸能芸術分野のクリエイターを対象に、発注事業者との取り引きにおいてフリーランス側が望む契約条件の基準値を明らかにするための意識調査(アンケート)を実施。報告会では、クリエイター1236人による回答結果が発表された。 アンケート回答者の職種は多い順にイラストレーター(22.8%)、漫画家(16.3%)、映像系スペシャリスト(9.2%)、執筆業(8.8%)など。 「契約書に入れるべきと考える条件」(複数回答)の質問に対する回答では「キャンセルフィー(発注側都合で発生したキャンセル代)」が最多の87%。次いで「著作権・著作隣接権の取り扱いについて」(78.2%)、「著作者人格権について」(69.2%)、「リテイク(作業のやり直し)の上限について」(69.2%)と続いた。 また、韓国では公正取引委員会がフリーランス向けに業種ごとの標準契約書を作成している。これを念頭に、アンケートでは、日本型の標準契約書を作成する際、韓国の標準契約書からフリーランスらが取り入れを希望する項目についても質問(複数回答)。 最多の回答は「二次利用の明確化と書面での合意」(80.2%)で、以下「ハラスメントの明確な禁止」(72.9%)、「著作権の帰属は最終的にフリーランスに戻る」(71.4%)、「仮に著作権の譲渡を行う場合、その対価に総収入の一定割合(ロイヤリティ)を提供」(71.2%)、「孫請け(多重下請け)契約での未払い防止」(70.6%)と続いた。
韓国ではクリエイターを保護することでコンテンツ産業が成長
アンケートの自由回答では、「正当な報酬を得ていない」「発注事業者により値下げを要求される」など、報酬の低さに対する不満が目立った。また、業務内容に不透明さや長時間労働、関係の対等性がなく発注事業者側が高圧的に出る・ハラスメントを行う事態について、多くのクリエイターが問題視している。 そして、フリーランスは現在の生活を維持するため仕事に追われ、生成AIなど技術革新に対応するための余裕を持てない事態も、浮き彫りとなった。 日本と韓国のコンテンツ産業における過去10年間の年平均成長率を比較すると、日本は約0.4%であるのに対し、韓国は約5.5%という。FLJの高田正行氏(紀尾井町戦略研究所コンサルタント)は「韓国はクリエイターの心理的安全性を保つことで生産性を最大化するための環境を15年以上整備してきた」と指摘し、日本でも生産性・国際競争力向上のために更なる取り組みが必要であると語った。