アート、音楽、文学…年を取ったからこそ歴史の重みが心に響く、欧州ひとり旅。散歩感覚で観光でき、気軽に食事できるカフェの多さもソロ旅にぴったり
ひとり旅は何も決めずにふらりと旅する楽しさもあるけれど、目的があれば充実度はさらにアップ。自分だけの《楽しみ》《好き》を思う存分に味わう3人の旅スタイルを紹介します。今回のテーマは「欧州」。ひとり海外旅行の達人がおススメする旅先は――。(構成=大野麻里) 【写真】寺田さんオススメの旅先は… * * * * * * * ◆日本語が聞こえない環境で心を解放《欧州》 海外旅行の経験はほとんどなく、英会話もおぼつかなかった私が、ひとり海外旅行にハマったのは約30年前。仕事、子育て、親との関係など悩みの多い時期でした。そんな時、確定申告でたまたま20万円近くが還付されて。 そのお金を使ってしたかったことを実現してみよう、新しい視点が持てるかもしれないと、小さな頃から親しんできた海外文学の舞台、ヨーロッパへのひとり旅を決めたのです。 イギリスから東欧まで列車で周遊し、味わったことのない自由な空気に圧倒されました。夢見てきた景色やシックな街並み、そこに息づく人々の暮らしが目の前にある。日本語から遠く離れた環境に身を置き、人々との出会いを重ねるうちに、心が解放されていくのを感じました。 同時に、見知らぬ人とコミュニケーションがとれる、トラブルに対応するために行動できるという自分の力に気づくこともできたのです。 そこから1年に1~2回、1週間を目安に、欧州ひとり旅を続けるように。その数38回。60代になった私がいまだに欧州の旅に魅力を感じているのは、アート、音楽、文学が大切にされているのはもちろん、古いものや成熟しているものに価値を置く文化が根づいているから。 それに欧州では、若者はもちろん、リタイア世代も、自らの楽しみや知的好奇心をさらに深めるためにひとりで旅することは一般的なんですよ。
バルト三国の1つ、ラトビアの首都リガでアール・ヌーヴォー様式の建物群を愛でながら歩いたり、ワインの世界的産地であるフランスのブルゴーニュ地方でぶどう畑やワイナリーをバスで巡ったり、スペインのアンダルシアでアルハンブラ宮殿の目が眩むような繊細なイスラム建築に出合ったり。 その時の感慨や興奮は今も鮮明です。年を重ねたからこそ、歴史の重みに裏打ちされたそれらの価値がより心に響いたのでしょう。 女性ひとり旅のしやすさという点でも欧州は安心です。都市部は公共交通機関での移動がしやすく、美術館、歴史的建造物など見どころが集まっているため、散歩感覚で楽しめる。またカフェ文化が定着しているので、ひとりでも気おくれせず軽食が食べられる飲食店が多いのも魅力です。 私は旅する国と街を決めると、1冊のノート(「ソリストノート」と名付けました)を用意。表紙裏に地図を貼り、中面に飛行機の搭乗番号、ホテルの住所や行き方、列車とバスの時刻表、現地語の挨拶、行きたい場所の情報などを記載します。クレジットカードの番号と緊急連絡先、パスポートのコピー、海外旅行保険で受けられる医療機関の電話番号も忘れずに。 ちなみに、私はいつも現地での大まかな移動手段(鉄道や高速バスなど)と宿だけを日本で予約しておき、日帰り旅や観劇に出かけるなどは現地で臨機応変に決めています。
【関連記事】
- 観光はしない。温泉と宿の時間を楽しむひとり温泉旅。宿探しは週末・観光シーズンを避けて。お風呂あがりのビールが最高の瞬間!
- 50歳過ぎから「食」をテーマにひとり旅。地元の食堂、有名シェフのレストラン、市場やデパ地下巡りも。開店時間直後やカウンターのあるお店を狙って
- 60代から始める「ソロ旅」の極意。持ち物は最小限、食事はランチや開店直後を狙って。ソロ旅を楽しむ《7ヵ条》
- 60代から始める「ソロ旅」の極意。宿の手配は?どんな目的で行く?凝り固まった常識や習慣を捨て、不便や失敗も含めて面白がるのが旅を楽しむ秘訣
- いきなりひとり旅が不安なら、まずは旅行中の半日ソロ行動や、おひとり様用ツアーから。慣れたら都市丸ごと満喫、聖地巡礼、自分史旅などテーマ旅も