自動運転のAIは「トロッコ問題」を判断できるのか? 国交省による検討、社会実験が進む
レベル4の自動運転が普及した場合、自動運転の車による交通事故の発生例も増えていくでしょう。自動運転のAIは交通事故被害を最小化するような判断ができるのか、といった点でも「AIはトロッコ問題を判断できるのか」「そもそもシステムの責任範囲はどこからどこまでか」という議論は注目を集めています。 この議論に一定の決着が見られた場合に「レベル5」の自動運転の実現見込みが一挙に高まるといっても過言ではないかもしれません。
自動運転(レベル4)の普及に向けた推進事業の採択例
トロッコ問題の議論とは別に、レベル4の自動運転の推進事業は各地で広まっています。 たとえば川崎市では、2024年に国土交通省の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)」の採択を受け、自動運転バスの実装走行の開催に向けて調整を進めています。
この川崎市の自動運転バス事業は「レベル4」に基づくもの。運行予定時期は2025年1月。川崎市と羽田地区の天空橋駅を結ぶルートと、川崎駅前と市立川崎病院を循環するルートの2つで運行する予定で、バスの最高時速は35キロとなります。なお、当面はドライバーが乗車した形になるとのことですが、交通量、歩行者の多い都市部での貴重な検証となります。 ■日産による自動運転(レベル4)の取り組み例
日産自動車は、神奈川県横浜市の港北ニュータウンで自動運転(レベル4)の実証実験を行っています。この実験は、専用の自動運転車両を用いて、一般道路での走行テストを行うというもの。実験の目的は、自動運転技術の安全性や信頼性の向上だけでなく、地域住民の移動ニーズに応える新たな交通サービスの可能性を探ることにもあります。 なお、2027年度には3~4市町村での数十台規模オンデマンド型乗り合いシャトルバスの運用も想定されています。 ■国内では自動運転(レベル4)での事故例もすでにある とはいえレベル4の自動運転の車がすでに事故を起こしている点にも注意は必要です。 2023年10月、全国初の「レベル4」走行の自動運転の車両が自転車と接触する事故を起こしています。事故は福井県永平寺町で起こったもので、障害物を検知するカメラの事前の学習データが不足していたために自動ブレーキがかからずに起きてしまったもの。 答えがなかなか出せない「トロッコ問題」のジレンマを前に、交通事故の発生リスクが高まる公道での「レベル4」の推進事業をどう進めるかというのは関係各所にとって難問であるとは言えるでしょう。