ロールス・ロイス・スペクター 詳細データテスト 品格ある走り 新時代ロールス 革新的EVではない
走り ★★★★★★★★★★
スペクターの動きに、暴力的だと感じさせるものはなにもない。フルパワーにしてもスクウォットは小さくトラクションのロスはなく、またスイッチオンでドッカン91.3kg-mというような力の出し方もしない。ただただどこまでも、静かに落ち着いたままペースを上げて流していける。伝統の12気筒を超えていると感じたが、それでいて整い具合も静けさで劣るということもない。 最新のロールスは速さも兼ね備えるが、0-97km/hはファントムが5秒以上、ゴーストは4.7秒といったところ。そしてスペクターが4.1秒。EVらしく低速から力強く加速し、シフトチェンジがなく、速度が上がるにつれたくましさは薄れはじめる。しかし、BMWグループのハイブリッド同期モーターは、その落ち具合が小さいほうだ。 それゆえ、高速道路の流れを制するようなパフォーマンスは健在で、97-161km/hは5秒ジャスト。ゴーストは5.6秒。これら凌ぐのがメルセデスAMGのEQS53で、4.8秒だった ロールスにとって速さよりはるかに大事なのが、スムースなドライバビリティである。スペクターには走行モードや回生ブレーキセッティングの切り替えがない。コラムシフトにはBモードがあって、麗しくクッションの利いたスロットルレスポンスを見せる。それは遅れを感じさせないが、瞬発的でもない、絶妙なところだ。パワーをかけていくと、すばらしくコントロールしやすい。 ブレーキ性能は、ほぼ現行ロールスと同等。ペダルはプログレッシブで、効き具合を調整するのもきわめてイージー。制動テストでは、緊急ブレーキではさすがに重量の影響を感じさせるが、テストの結果は制動能力に不安を感じさせるようなものではなかった。
使い勝手 ★★★★★★★★★☆
■インフォテインメント スペクターのタッチ画面式インフォテインメントシステムは、さすがにファントムのようなわけにはいかなかった。あちらはダッシュボード手前側に一枚ガラスが張られ、必要ないときは視界から消すギミックも備えている。 対するこちらは、BMWオペレーションシステム8.0の最新版を、ロールス用に仕立て直したものだ。しかし、本家のそれよりはるかにすばらしいのは、空調関連の操作部を統合しなかったこと。さらに、iドライブスタイルのダイヤルや、ユーザーが設定でき機能へのアクセス性を格段に上げる実体ショートカットボタンもある。 音声認識システムも同時の演出を忘れない。ステアリングホイールの音声操作ボタンを押すと、画面上に半透明のスピリット・オブ・エクスタシーが現れる。機能面は、自然な話し言葉を認識して反応し、車内温度温度調整も可能。ただし、助手席ドアの開閉はできない。 専用アプリを介して、充電やその前のコンディション調整などもリモートで操作可能。これらを統括するソフトウェアはウィスパーズと銘打たれた。 ■燈火類 アダプティブヘッドライトはこの上なくパワフルな光で広範囲を照らし、減光のレベルもうまく設定されている。多くの対向車の防眩に効いているようで、この点はBMWグループの最新モデルで体験済みだ。 ■ステアリングとペダル ステアリングコラムは電動で、十分な調整幅がある。ペダルはやや右寄りで、普段は気にならないが、左足ブレーキをすると足首を傷めるかもしれない。