92年ぶりメダル獲得の“初老ジャパン”が巻き起こした愛称論争。平均年齢41.5歳の4人と愛馬が紡いだ物語
障害馬術で起きたアクシデント。逆境からの3位フィニッシュの背景
人馬一体ゆえのアクシデントもあった。総合馬術は馬のステップの正確さや美しさを競う馬場馬術、さまざまな障害物が設置されたコースを走るクロスカントリー、障害物をあらかじめ決められた順番通りにクリアする障害馬術を3人馬が3日間で実施。減点の少なさを競い合う。 日本は初日の馬場馬術で5位発進し、2日目のクロスカントリーを終えた時点で3位に浮上した。しかし、最終日の障害馬術を前に実施されたホースインスペクション、いわゆる馬体検査を、大岩のグラフトンストリート、そして北島のセカティンカJRAがクリアできなかった。 グラフトンストリートは再検査をクリアしたものの、北島はセカティンカの再検査そのものを辞退する決断をくだす。競技会場のベルサイユ宮殿を取り囲む森のなかに設置された、全長5キロあまりのクロスカントリーコースを走破した際に愛馬が怪我をしてしまったと北島は明かす。 「ごめんね、という気持ちがやはり大きかったですね。もちろんイギリスに帰ってからしっかりとケアをして、足を治してあげてから、また一から踏み出していきたいと思っています」 北島とセカティンカの代わりに、リザーブとして待機していた田中とジェファーソンJRAが出場する。しかし、交代する場合は規定で20点を減点される。日本は5位に後退してスタートしたが、田中、戸本、大岩が安定した走行を披露。上位にいたスイスとベルギーを追い抜いた。 いつ訪れるかわからない出番に備えて、田中が愛馬ジェファーソンのコンディションを完璧に整えていたからこその3位フィニッシュ。大役を終えた田中は晴れ舞台をこう振り返る。 「ジャンプが本当に得意な馬なので信頼していましたし、最後まで楽しく走行できました」 金メダルのイギリス、銀メダルの開催国フランスとともに、人馬一体で登場した表彰式。愛馬セカティンカとの登場がかなわなかった北島だけが単身で、大岩とグラフトンストリート、戸本とヴィンシー、田中とジェファーソンの前を必死に走る微笑ましい光景も生まれていた。