92年ぶりメダル獲得の“初老ジャパン”が巻き起こした愛称論争。平均年齢41.5歳の4人と愛馬が紡いだ物語
集大成となったパリ五輪。「初老ジャパン」のもう一つの夢とは
4人は2018年からチームを結成し、同年の世界選手権の総合馬術団体で史上最高位となる4位に入った。しかし、コロナ禍で1年延期された東京五輪は、メダルにまったく手が届かない11位。悔しさを糧に挑戦を継続させ、ヨーロッパで開催されるパリ五輪を最大の目標にすえてきた。 だからなのか。2028年のロサンゼルス五輪を含めた今後に関して、4人は異口同音に「所属先と相談したい」と語った。大岩は日本企業のnittoh、戸本は日本中央競馬会、田中と北島はともに乗馬クラブクレインに所属している。日本への帰国も選択肢に加わってくる可能性もある。 さらに大岩は、愛馬グラフトンストリートに関してこんな事情もつけ加えている。 「今回のパートナーを組んだ馬は16歳なので、4年後だと20歳になります。このパートナーシップで次のオリンピックに向かっていく、という形はおそらくないと思っています。どういった形で続けるのかを含めて、いろいろと相談したうえで決めていきたい」 もしかすると、知名度が一気に高まった「初老ジャパン」として大きな国際大会に臨むのは、パリ五輪が最初で最後になるかもしれない。それでも舞台となったベルサイユ宮殿を愛馬とともに駆け抜け、イギリスのアン王女からメダルを授与された表彰式での勇姿は日本中に新鮮な驚きを与え、五輪のなかで唯一、男女が同じ舞台で競う馬術という競技の存在を強烈に印象づけた。 団体に続いて行われた総合馬術個人決勝で、5位に入賞した戸本はこう語っている。 「僕が海外で経験したことを次の世代に伝えていって、もっと若い選手たちがロサンゼルス五輪やその次を目指していく手助けをすることも、僕の使命だといまは感じています」 日本代表の愛称が「〇〇ジャパン」へ変わるとすれば、それは競技人口の広がりを意味する。愛してやまない馬術競技の発展は、メダル獲りに続く「初老ジャパン」のもう一つの夢でもある。 <了>
文=藤江直人