住宅街にひっそりと現れた新店は、グルメ本編集長が唸るクオリティの“ピザ屋”だった
「ンドゥイヤとモッツァレラ」
南イタリアのソーセージ、ンドゥイヤとモッツァレラチーズのピザは、スパイシーな味わいが後を引く。「ンドゥイヤは材料に豚のモツを使っているので、火を入れると脂が溶けてソースになるんです。ちょっとピリ辛で、ビールが飲みたくなりますよ」
「ジャガイモのカチョエペペ」
ピザのほか、窯焼き料理も魅力的なラインアップ。季節の野菜を使ったものが多く、産地は後藤さんの地元・調布や、出身地・京都の福知山など、自身にゆかりのある食材を大切にしているそう。ジャガイモのカチョエペペも、そんな一品。
「揚げ焼きっぽくしたジャガイモに、ペコリーノチーズと黒胡椒をたっぷりかけて。ジャガイモはその時々でおいしい品種を使います。メークインなど粘りのあるタイプより、キタアカリなどホクホク系がいいですね」
大木さん「シンプルながら、うまいに決まっている逸品。クラフトビールとぜひ。 」
好きなものだけを詰め込んで、ゆるやかに、心地よく
「SAM」という店名は、アメリカ・オレゴン州のポートランドでクラフトビールを手がける友人の名前から借用したもの。後藤さんはポートランドが持つ独特のカルチャーに引かれ、2017年ごろからコロナ禍前まで、毎年のように現地を訪れていたそう。時には同業の友人知人と連れ立って出かける時もあり、まるで大人の修学旅行のような楽しさだったとか。
「アウトドアが身近で、地産地消が浸透していて、ファーマーズマーケットが盛んで。自然の近くで、人がのびのび暮らしているいい街だなと思います。ナチュラルワインもクラフトビールもおいしいし、薪の火で料理をするレストランも多いんですよ」
ピザに、ナチュラルワインに、クラフトビール。後藤さんが大好きなものだけを集めたら、お客さんも笑顔になるフレンドリーな空間ができあがった。それはどこか、ポートランドのゆるやかで心地よい空気を思わせる。通常はカウンター席のみを使っているが、実は店の奥にテーブル席が1つだけスタンバイ。「カウンターには座りにくい子どもやお年寄りを連れた家族にも、くつろいで楽しんでほしい」という後藤さんの気持ちが現れた空間だ。