住宅街にひっそりと現れた新店は、グルメ本編集長が唸るクオリティの“ピザ屋”だった
配合した粉は、機械を使わず手でこね上げる。「前職の時、機械が壊れて仕方なく手でこねたことがあったのですが、それが思いのほか楽しくて。大きな店で手ごねを続けるのは無理がありますが、この店なら問題ありません。生地の状態は気温や湿度によって日々変わりますが、自分の手でこねることで、そうした微妙な変化もよくわかります」
このやり方だと、仕込める量は1日に30枚分ぐらいが限度。それでも「たくさんの人に食べてほしいけれど、無理をするつもりはないんです」と話す。
大木さん「しっかりと旨味を感じられながら、軽やかで何枚でも食べられそうなピッツァです。最高のピッツァを作るための創意工夫を続けていて、ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)としての矜持を感じます。」
目の前で焼き上げられる様子に、ワクワク
後藤さんのピザは、時々、ちょっとだけゆがんだ形に焼き上がる。というのも、形を作る時「丸くすること」にあまりこだわらないからだ。
「生地を延ばす時は、必要以上に触らないようにしています。触りすぎると生地のチカラが抜けるというか、発酵しているものなので、ガスがどんどん抜けてしまうんです。なので、丸くなる時もあれば、そうならない時もあります」
窯に入れたら、ほんの90秒ほどで焼き上がり。焼きたてを目の前で切り分け、サーブされるピザのおいしそうなことといったら! 焼き色、香り、切り分ける音のすべてが食欲を刺激する。
「マルゲリータ」と「マリナーラ」
初めてのお客さんに後藤さんがおすすめするのは、おなじみのマルゲリータと、シンプルなマリナーラ。特にマリナーラは、自分でもいちばんのお気に入りだそう。「このピザが生まれたナポリでは、船乗りのお弁当と称されるそうです。具材はトマトソース、にんにく、オレガノ、バジルだけと本当にシンプルで、チーズも使いません。職人の腕の見せどころのようなピザだと思います」
大木さん「私のイチオシはマルゲリータ。トマトソース、モッツァレラチーズ、バジルのみというシンプルな構成要素で、なぜこれだけおいしくできるのかと驚きました。ピッツァは400℃以上の高温で焼かれて熱いので、ナイフとフォークを使い、先端から丸めて食べるのが王道です。しかし、私は少し冷めてきたら手でもいただきます。ピッツァを食べてる!って感じがして楽しいものですから。」