DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐

　8月25日、モビリティリゾートもてぎでスーパーフォーミュラ第5戦の決勝レース（37周）が行なわれた。優勝を飾ったのは牧野任祐（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）で、今季2勝目となった。 スーパーフォーミュラ第5戦もてぎ：決勝結果 　シーズン折り返しのレースとなる今回のもてぎ戦。ポイントリーダー野尻智紀（TEAM MUGEN）とそれを追うライバルとの点差は縮まるのか広がるのか……そこにも注目が集まったが、今回は何よりニック・デ・フリーズ（ITOCHU ENEX TEAM IMPUL）の参戦が話題となった。F1も経験し、世界選手権レースでの実績豊富なデ・フリーズは事前テストもできないまま、まさにぶっつけ本番でレースに臨むことになった。 　予選は雨の予報もあったが終始ドライコンディションの下で行なわれ、山下健太（KONDO RACING）がデビューイヤー以来7年ぶりのポールポジション。2番手には太田格之進（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）、3番手には大湯都史樹（VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING）と続いた。野尻は4番手で、デ・フリーズは18番手スタートとなった。 　決勝スタート時刻は14時40分だったが、その時点では心配された雨は降らず。しかしレース中に雨雲が通過する可能性もあったため、いつも以上に展開が読めない中でのスタートとなった。 　スタートをうまく決めた山下はトップのままオープニングラップを終了。2番手には太田、3番手には牧野が5番グリッドからジャンプアップし、大湯、野尻と続いた。13番手スタートだった岩佐歩夢（TEAM MUGEN）は1コーナーで坪井翔（VANTELIN TEAM TOM’S）と接触があったようで、フロントウイングにダメージがないかチームに無線で確認を求めていた。 　山下と太田のギャップは1秒前後でつかず離れずといった形。さらにその後方には太田のチームメイトである牧野が迫った。2番手3番手はチームメイト同士ということもあり、ピットインのタイミングについてそれぞれがチームにしきりに確認していたが、ピットレーンオープンとなる10周目に首位の山下が入らなかったことから、2番手太田がその逆をついてピットに。一方で3番手牧野はそれを見てステイアウトを選択した。 　ピットイン組の先頭となった太田はハイペースで飛ばし、ステイアウト組の下位集団をかき分けていった。一方で山下と牧野はピットインのタイミングをレース後半まで引っ張り、終盤のペースに懸ける戦略をチョイスした。 　17周目、阪口晴南（VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING）が4コーナーの立ち上がりでコース外にマシンを停めた。無線でのやり取りから、スロットル系トラブルと思われる。セーフティカーが出される可能性があったため、各チームのピットは準備に動いたが、当該区間ダブルイエローの状態で車両の処理が完了した。 　22周目、2番手牧野が先に動いた。牧野は太田、大湯の後ろでコース復帰。首位山下もこれにリアクションして23周目にピットインしたが、牧野の後ろでのコース復帰となり、ポジションを落とす形となった。 　これで全車がルーティンストップを完了。首位は太田に代わり、2番手の大湯に11秒の差をつける独走態勢。25周目にはフレッシュタイヤを履く牧野も大湯を攻略し、ダンディライアンのワンツーとなった。 　1分35秒台という他の追随を許さないペースで走る牧野は、太田との差をみるみる縮めていく。残り10周で5秒差、残り6周で3秒差、残り4周で1.3秒差……ここからはまさに“がっぷり四つ”の直接対決となった。チームからも「クリーンファイトでお願いします」との無線が飛んだ。 　残り3周となった35周目は1周を通してサイドバイサイドの戦いに。ヘアピンへのブレーキングでは一旦牧野が前に出たがややオーバーランし、再び太田が前に。90度コーナーでも牧野が並びかけたがスペースはなく、太田が首位をキープして残り2周となったが……そこでドラマが待っていた。 　90度コーナーのブレーキング。太田は牧野の目の前でスピンしてストップ、無線で太田は「スロットルが壊れた」と訴えていた。これで首位に立った牧野がトップチェッカー。今季2勝目を挙げたが、涙の初優勝を挙げた5月のオートポリス戦とは裏腹に、牧野は「太田のレースだった」と無線で語り、悔しさを噛み締めるような表情でマシンを降りた。 　2位は山下。3位は野尻で、ポイントリーダーの座をキープした。4位は山本尚貴（PONOS NAKAJIMA RACING）が入り、5位にはレース終盤に怒涛の追い上げを見せた坪井翔（VANTELIN TEAM TOM’S）が食い込んだ。