50代からのiDeCoは遅い? 専門家が語る「老後資金」の組み立て方
50歳からでもiDeCoを利用しやすくなった
一方、iDeCoはどうでしょう。従来、50歳以上でiDeCoに加入するのはあまり意味がないと思われていました。理由は、これまでは60歳までしかiDeCoに加入することができず、かつ、10年以上加入期間がなければ60歳からお金を受け取り始めることができなかったからです。 ところが法改正によって、2022年5月1日から、加入できる年齢が65歳へと延びました。もちろん国民年金に加入していることが前提なので、60歳までしか国民年金に加入できない自営業やフリーランスの人は、一部の例外を除いて60歳以降の加入はできません。 しかし、サラリーマンで、60歳以降も再雇用によって厚生年金に加入したまま働くのであれば、65歳まで加入し続けることができます。したがって、仮に50歳から加入したとしても、最長15年加入することができることになります。 積立可能上限額は職業や立場によって異なりますが、仮に毎月2万円ずつ積み立てていけば積立額の合計は360万円、これが非課税で運用できるため、仮に年利3%で運用できれば454万円、2%で運用したとしても420万円ぐらいになります。 加えて、15年間積み立てを続けることで戻ってくる税金の額はおよそ70万円あまりになります※2ので、合わせると500万円ぐらいにはなります。65歳でリタイアした時に、これだけの金額をプラスアルファでこしらえることができるメリットは大きいと思います。 言うまでもなく、iDeCoでの運用益に対しては税金がかかりませんから、NISAとiDeCoの両方を活用することによって、50歳からでもかなりの資産を作ることが可能です。
老後資金の組み立て方の選択肢が拡がる
さらに言えば、50歳からでもNISAやiDeCoを始めることで老後資金の組み立て方の選択肢が拡がるというメリットがあります。それは一体どういうことなのか、具体的に見てみることにしましょう。 公的年金の支給開始は65歳からですが、受給する側が受け取り始める年齢は、60~75歳の間で自由に決めることができます。70歳まで受給を繰り下げると受給額が42%増えます。 年金は長生きリスクに備える保険ですから、元気で働けるうちは働いて、可能な限り受取開始を遅らせ、人生の後半に厚く給付が受けられる方が安心であることは言うまでもありません。 ところが、そうは言っても現実に65歳から70歳までの生活をどうすればいいのかという問題が起きるでしょう。 一番確実なことは70歳まで働くことですが、それに加えて65~70歳の5年間の生活をiDeCoやNISAの取り崩しでまかなうというやり方もあります。 前述のように長い時間をかけて積み立てながら運用し、ある程度の原資を作ることができれば、それを毎年少しずつ引き出していけばいいのです。iDeCoであれば年金方式での受け取りが可能ですし、NISAの場合は必要な資金が生じた都度いつでも引き出すことが可能です。 それにiDeCoの場合、受け取る時に税金がかかりますが、「公的年金等控除」が適用され、他の年金収入がなければ、年間110万円までは控除枠に収まります。公的年金の受給開始を70歳まで繰り下げるのであれば、当然他の年金収入はないことになりますから、受け取る時も非課税が実現できることになります。