勝者なき参院選 安倍政権は“信任されたとは言えない”
野党共闘の10議席「驚きに値する」
今回の参院選では、全国で32ある1人区の勝敗が選挙結果の趨勢に影響を与えるとみられていた。その選挙区で1人しか当選できないので、野党は2016年の参議院で、すべての1人区で候補者を1本化し、11勝(与党は21勝)を挙げた。そして今回は立憲民主党、国民民主党、共産党などの5党派と「市民連合」による共闘で、結果は10勝(同22敗)だった。 この野党共闘の結果について、市民連合の呼びかけ人でもある中野教授は一定の評価をし、むしろ驚いたと率直に語る。「野党協定がなされることへの安定感はあったが、3年前の(参院選の)ような盛り上がりに欠ける部分もあった。今回はほぼすべてが新人で現職に挑む構図がほとんど。その中で前回にほぼ匹敵する10議席も取れたというのは驚きに値する」。 参院選が終わり、早くも次の解散総選挙を取りざたする声もある。参院選での野党共闘の枠組みは、衆院選でも継続されるのか。中野教授は「続くことになると思う」という。その理由は「選挙制度」にあると説明する。 「衆院も参院も選挙制度に大きな問題があると私は思っている。衆院の小選挙区、参院の1人区は変えるべきだというのが私の持論」。そして政治学者の菅原琢氏の論を紹介しながら、今の選挙制度の課題を挙げた。 「そもそも32の1人区は自民党の強いところしかない。1人区が混在している選挙制度が自民党の票を上げ底している。小選挙区(1人区)は、勝者総取り方式で死に票が多い。さらに有権者に無理に『二択』を迫るという大きな問題を抱えている」 衆院における小選挙区制度は、1994年に公職選挙法が改正されて導入された。当時、二大政党制による政権交代が続いていた英国の制度を参考に、日本でも二大政党による政権交代が繰り返されることをイメージした制度だ。小選挙区制によって民意を集約し、一元的に権力を集中させて政策を遂行させるのが狙いだった。しかし中野教授は言う。 「小選挙区制は、選挙結果が(民意に)比例的ではなく、わざと歪みを作る制度なので、民主主義的には歪みの多い制度。ただ選挙制度はすぐ変えられるわけではない。この選挙制度の中でバランスのある政治をつくるためにには、野党が共闘しなければ勝負にもならない」 そして話は参院の位置づけにも及んだ。「日本は二院制の中でも参院の力が強い国。現実的には(参院も)比例的な選挙制度にして、政権に合意形成を強いる形にしないと厳しい」