元Moto2ライダー、アクセル・ポンスの大冒険。スペインから徒歩でインドを目指す旅……王者シト・ポンスの息子
元Moto2ライダーであり、中量級クラス王者シト・ポンスの長男でもあるアクセル・ポンスは現在、歩いて旅をする日々を過ごしている。しかもその旅は並大抵のモノではない……ヨーロッパを出発し、インドを目指す壮大な旅なのだ。そして彼はまもなく、目的の地であるインドに辿り着こうとしている。 【ギャラリー】MotoGPイギリスGP、75周年祝うビンテージ・カラーが登場 スペイン出身のアクセル・ポンスは、父のチームであるポンス・レーシングから、2009年にMooGPの250ccクラスに参戦を開始し、翌2010年からは250ccクラスの後継となったMoto2クラスへの参戦を継続させた。 結局アクセル・ポンスは2017年までMoto2クラスへの参戦を続けたものの、成功を収めることができず。表彰台を獲得することもできなかった。 しかし最近になって、アクセル・ポンスに関する動画が投稿されると、それが話題となった。 この動画の中でアクセル・ポンスは、レースの世界から去った後、2023年に冒険を開始し、ヨーロッパから徒歩でインドを目指していることを明らかにした。動画はインドの隣国であるパキスタンで撮影されたもので、当時のアクセル・ポンスは、インドとの国境を越えるために必要なビザの承認を待っているところだった。 ロードレース世界選手権の250ccクラスで1988年と1989年の2年連続でシリーズチャンピオンに輝いたシト・ポンスが、息子アクセル・ポンスが歩んでいる”人生を変える旅”について詳しく語った。 「アクセルがやっていることは、並外れていて、信じられないほど勇敢で勇気のあることだと思う」 シト・ポンスはそう語った。 「来年の3月で、息子がバルセロナを出発してから2年が経つことになる。彼はずっと歩いているんだ」 「息子は我々に、歩くこと、世界を見ること、人生の哲学や宗教を理解することが必要だと説明し始め、そして旅を始めたんだ」 「彼は毎朝5時に起き、瞑想とヨガをしてから歩き始める。かなりの規律が必要だ。それに、彼はホテルに泊まるわけではなく、バックパックを背負って、最低限の荷物だけを持って旅をしているんだ」 アクセル・ポンスは、ひとりで旅を始めた。しかし道中では同行者もいたとシト・ポンスは明かす。例えばトルコ南部、テッケ半島の約400kmにも及ぶ”リュキアの道”では、同じように旅をしていたカップルと出会ったようだ。 「息子はインドまで歩いていくつもりだった」 そうシト・ポンスは説明する。 「問題はパキスタンとインドの国境が閉鎖されていることだった」 「その後息子はヒマラヤに行くことを決め、そこで5ヵ月間を過ごした。すると色々な人たちがやってきて、写真を撮ったり、話を聞いたりした。それは、彼が望んでいないことだった。でも息子はそこで有名になった。今度はここでも同じようなことが起きている」 「驚くべきことだし、素晴らしいことだから、ヨーロッパでも話が広まることは予想できた。最近どんなことが起きたのかというのも、目にしてきたよ。この話は、どこにでも出回っている。幸いなことは、彼はここで何が起きているのかということを知らないということだ」 この動画により、アクセル・ポンスの今の新しい生活が明らかになると同時に、様々な憶測も飛び交った。逮捕されたのではないかとか、パスポートを捨ててしまったのではないかという噂もあった。 しかしシト・ポンスは、これらの噂は事実と異なると語る。 「アクセルは元気で、逮捕されたことはない」 「彼はインドへの入国ビザの管理を担当していた、パキスタンの機関に書類を提出した」 なおアクセル・ポンスは、今回の旅にスマートフォンを持っていっておらず、ソーシャルメディアへの投稿もしていない。しかし両親とは、定期的に連絡を取り合っているようだ。しかもシト・ポンスは、息子がアジアへと足を踏み入れる前、北マケドニアで共に時を過ごしたという。 「彼は連絡できる時には我々に電話してきて、自分が今何をしているのかを説明してくれる」 「彼が歩き始めてから数ヵ月経った時、息子の経験の一部を分かち合いたいと思ったことを覚えている。それで彼からの電話があった時、会いに行くと伝えた。それは2023年7月のことだった」 「彼は北マケドニアにいると言った。そして、彼を見つけるための道順を教えてくれた。簡単には見つからなかったが、なんとか見つけることができた。我々は1週間にわたって一緒に歩き、話し、森の中で眠った。忘れられないような景観だった」 「息子に別れを告げた時、歩くのはとても大変で、信じられないほど暑いねと伝えたのをよく覚えているんだ」 「トルコに着いた時、私は息子に、家に帰ってくるように言った。でも彼はその後もずっと歩き続けてパキスタンに辿り着き、もう6ヵ月もそこにいる」 シト・ポンスは、息子アクセルが歩んできた道を誇りに思い、その決意を賞賛する。 「アクセルの物語は、彼が払ってきた努力と犠牲、平和な生活、愛に駆り立てられたこと、様々な文化や宗教を知ることで人間的な視点から世界を理解しようとしたことなどにおいて、称賛に値すると思う」 「徒歩で世界を横断するなんて、大きな力と勇気が必要だ。でも我々は、彼を全面的にサポートしたいと思っている」
German Garcia Casanova