土屋太鳳の素直な芝居が際立つ…”百合子”が嫌われ者にならなかったワケ。『海に眠るダイヤモンド』第2話考察レビュー
それぞれの恋の矢印の向く先は
そういう複雑で、ともすれば身勝手に思えてしまう感情を土屋が素直に表現してくれるから、百合子が憎めず、むしろ愛されるキャラクターに仕上がっている。 「百合子が思ってるよりもずっと、みんな大切に思ってるよ。神様も」と欲しい言葉をくれる鉄平の愛情を受け止めることができないのも、何か深い事情があるのだろうと思わせる重厚な演技だった。 恋人である賢将は「本当に好きな子とは手も握れない」と言っていた百合子。スクエアダンスのときに、その手を握るのを躊躇ったことから、おそらく賢将は朝子のことが好きなのだろう。 【著者プロフィール:苫とり子】 1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。 食堂に定休日がないため、端島を出られない朝子に賢将は度々お土産を持ってくる。一見、不自由に思えるが、両親にまっすぐ愛されて育ち、純粋に賢将から思われて鉄平を思う朝子は、自由奔放に見えて実は色々なことに縛られている百合子からすれば、とても自由で眩しく見えるのではないだろうか。だから、つい意地悪してしまう。 その一方で朝子は大学にも進学できて、鉄平にも思われていた百合子を羨ましく思っているのだろう。今は、鉄平が何かと気にかけているリナ(池田エライザ)が朝子にとっては目の上のたんこぶ。鉄平は百合子にしろリナにしろ、どこか影のある女性に惹かれる傾向があるのかもしれない。だが、リナの恋の矢印は、台風の時に迫り来る波から自分を救ってくれた進平に向きそうだ。 ラストでは、台風が明けて消毒の匂いが漂う真水を飲み干す百合子と、現代で浄水器の水を飲むいづみの姿が重なる。豊かで過酷な端島での暮らしと、そこで繰り広げられる複雑な恋愛模様。それらを追う中で、少しずつ私たちはいづみの正体に近づいていくのだろう。 【著者プロフィール:苫とり子】 1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。
苫とり子