土屋太鳳の素直な芝居が際立つ…”百合子”が嫌われ者にならなかったワケ。『海に眠るダイヤモンド』第2話考察レビュー
自由奔放に見える百合子が抱える事情
一方で、この第2話では一見豊かで楽しそうな端島で暮らす人々の苦労も明かされる。端島はぐるっと海に囲まれているが、真水はなかなか手に入らなかった。本土から三日に一回、船で運ばれてくる真水が人の手によって各家庭に配られるが、制限がある中で島の人たちは少しずつ使う。 狭い土地にひしめき合って暮らしているものだから、工員住宅は常に満杯で高層階の部屋が開けば、ちょっとした争いに。そうして普段から何でも分け合い、譲り合って暮らしている島の人たちだから、いざという時の団結力は強い。 激しい台風の時はなるべくひと所に集まって互いを励まし合い、「工員住宅のトイレが溢れた」「食堂のオーブンが濡れて壊れそうだ」といったピンチにはみんなが駆けつける。 でも、噂が回るのも早い。進平(斎藤工)の妻・栄子(佐藤めぐみ)は2年前の台風で波にさらわれて行方不明になっていた。だが、進平は以降も1人で家族用の部屋に住み続けており、周りの人たちは「もう帰ってこないのに」と思いつつも踏み込めずにいる。時々、進平がゴミ捨て場から海を眺めているのは、そういう煩わしさからいっとき離れて静かに妻を偲ぶためなのかもしれない。 そんな端島をひそかに出たいと思っているのが、百合子だ。長崎にはキリスト教を信仰する人たちが多いのは周知の事実だが、百合子の母・寿美子(山本未來)は中でも敬虔なクリスチャンだった。 台風が来ても避難せず神に祈る寿美子に、百合子は「浦上の上にだってピカは落ちたんだよ!」と言い放つ。遺影になった百合子の姉は、もしかしたら長崎の原爆で命を落としたのかもしれない。 そのせいで心身のバランスを崩したであろう母から離れたくも、百合子が端島にしがみついているのは外に出て何者でもない自分になることへの恐怖があるからだろう。「綺麗なまま思ってもらえる」と亡くなった人を羨ましく思ってしまうくらいに愛を渇望する一方で、それでも寿美子と基人(桜井聖)の娘で、賢将(清水尋也)の彼女で、朝子(杉咲花)の友達で、鉄平が好きだった人…という肩書きを捨てられない。