--AIエージェントでは、ユーザーの入口が必ずしもWorkdayではないものの、Workdayの機能を使っているというケースが増えてくると考えられます。このようなAIエージェントのトレンドは、機能の開発にどのような影響を与えているのでしょうか。 　これは興味深い変化だと思います。AIとユーザー体験（UX）が一体化しつつあります。これまでは、UXの取り組みのほとんどがインターフェース（UI）の改善、ページの見た目に費やされていました。それは今後もある程度重要ですが、AIの時代は、AIがページの内容を理解できることの方が重要になります。AIが理解して、99％を入力してくれれば、見た目は重要ではありません。 　2024年に入りWorkdayは、AIを使った採用支援のHiredScoreを買収しました。HiredScoreは、製品全体がAI駆動型で、一見すると単純なUIですが、裏でAIがさまざまな作業を行っています。それが、ユーザーを惹きつけています。これは、従来の業務アプリケーションからの変化と言えます。どこに投資をするのか、どこに投資をしないのかが変わってくるでしょう。 　先ほど提携の話をしましたが、ユーザーが実際にどこで作業をしているのかを、より広い視点で考える必要があります。Workdayの機能を使ってもらうにあたって、必ずしもWorkdayに来て使っているのかにこだわる必要はありません。 --「Workday Extend」として、拡張を開発できるサービスを強化しています。エコシステム戦略について教えてください。 　2020年に、それまで「Workday Cloud Platform」として提供していたものをリブランドし、「Workday Extend」として一般提供を開始しました。既に1000社以上がExtendを使って拡張を開発しています。開発した拡張を公開できるマーケットプレイス（Marketplace）を2023年9月に開設し、現在430種類程度のアプリケーションが公開されています。成長という点では、目を見張るものがあります。 　例えば、小売大手のTargetは、Extendを使って従業員が公共機関のパスを申請できる機能などを開発しています。このように、業務の中にはわれわれより顧客の方が詳しいものがあり、われわれが構築するよりも顧客が構築する方が理にかなっています。Extendはローコード／ノーコードで、Co-pilot機能も備えているので、アナリストなど専門知識がなくても開発ができます。 --Workdayは日本市場を強化しています。多くの日本企業には、新卒の一括採用、転勤など特殊な仕組みがあります。日本固有の人事要件への対応をどのように進めるのでしょうか。 　日本チームから市場の特性を聞いています。Workdayの多くの機能は、日本企業がそのまま活用できますが、特定の設定が必要なものもあります。 　日本市場向けの対応は、Extendも活用しながら進めていきます。既にExtendを使って開発が進んでいます。その例が人事評価です。米国では、人事評価を1人で行いますが、日本は360度評価と言われ、複数人で評価しています。Extendを利用して、3カ月で360度評価の機能を開発しました。 　日本市場でも顧客やパートナーがExtendを活用し、どんどんWorkdayを活用してほしいですね。 --「Transform（変革）」のカテゴリーではエージェントが中心ですが、今後どのような技術が考えられるのでしょうか。 　Transformでは、プロセスを変革することが目標になります。まだ初期段階にあり、エージェントはその1つと考えています。 　今後エージェントがたくさん登場するでしょう。顧客が自分たちでエージェントを作る動きも活発になると思います。ですが、エージェント一つでは自動化や効率化にとどまりますので、変革のためにオーケストレーションが必要です。 　これまでのビジネス変革は、コンサルタントを起用してコンサルタントの提案を実行するというものでした。3年もすると時代が変わり、再度改革をします。これに対して、AIの時代は、変革が継続的なものになります。常にプロセスを分析し、改善を考えたり、自動で変更したりします。 （取材協力：ワークデイ）