「米朝」「米中」で世界が揺れた2018年 国際ニュースを振り返る
今年の国際ニュースは、1月1日の北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による「核のボタンは常に私の机にある」とアメリカを威嚇する演説で幕が開けました。北朝鮮はその後、急速に南北融和の姿勢を強め、6月にはアメリカのトランプ大統領との歴史的な会談が実現しました。トランプと金委員長が今年前半の話題を独占した感もありますが、年後半にもさまざまな重要なニュースがありました。2018年の国際ニュースについて、国際政治学者の六辻彰二氏に振り返ってもらいます。 【写真】トランプ大統領で揺れ動いた2017年 国際ニュースを振り返る
(1)米朝首脳会談(南北首脳会談)
6月12日、シンガポールでトランプ大統領と金正恩委員長が会談。1950年に勃発した朝鮮戦争以来、米朝の首脳が顔を合わせるのは初めてのことでした。 このお膳立てしたのは韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領でした。米朝間の緊張が高まる中、文大統領は2月の平昌冬季五輪の開会式での南北選手団の合同入場などで「和解」を演出。これをステップに4月27日には南北軍事境界線にある板門店で金委員長との南北首脳会談にこぎつけ、米朝首脳会談への道筋をつけたのです。 ただし、その結果は実り多いものではありませんでした。米朝首脳会談の合意文書ではアメリカにとって最優先の「非核化」と北朝鮮が譲れない「体制の保証」の双方が盛り込まれ、お互いに受け入れられるものになりました。しかし、その「非核化」がアメリカの求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」なのか、北朝鮮の主張する「段階的な非核化」なのかすら明らかではありません。また、「体制の保証」に関しても、確認されたのは「米朝両国は朝鮮半島での永続的かつ安定した平和体制の構築に向けて共同で取り組む」ことだけで、大前提となる朝鮮戦争の終結に触れられていないため、その保証は「口約束」のレベルです。 トランプ大統領の就任以来、米朝は緊張を高めてきましたが、「直接対決は避けなければならないが緊張は和らげたい」点で一致します。「何も決めない」米朝首脳会談は、この状況のもとで実現したのであり、根本的には何も変わっていないといえます。