フグがつくる幾何学模様の“美しいミステリーサークル”が話題に…不思議な波模様でメスに求愛
フグは不思議な魚だ。危険を感じると身体を膨らませる姿は、なんともユニークだ。また、毒がありながらも身の美味しさで、古くから人々を魅了してきた。縄文時代には既に好んで食べられていたことが、遺跡から出土した骨によってわかっている。 【動画】オスのフグがメスに求愛するために美しいミステリーサークルを作る様子 そんなフグにもうひとつ、あまり知られていない興味深い習性がある。海底でせっせと砂を集め、不思議な文様を形成するのだ。細かな砂で描かれる美しい模様は、まるでミステリーサークルのようでもある。小さな身体でせっせと砂を集め、直径2mにも達するサークルを描く。 米公共放送のPBSが贈る人気の自然番組シリーズ『ネイチャー・オン・PBS』が、その不思議な生態に迫った。
ロボットのフグが海底探索
フグを驚かさずに間近で観察できるよう、PBSは奇策に打って出た。「スパイフグ」なるフグのロボットを製作し、本物のフグがすむ海底で活動させる作戦だ。胸びれと尾びれを器用に動かして海中を進む。 ダイバーとともに海底を探索するスパイフグは、澄んだ水底に描かれた文様を発見した。その形はまるで、ていねいにデコレーションされたケーキのようだ。 粒度の小さな砂粒が土手のように盛り上げられ、ゆがみのない2重の円を描いている。それぞれの円には、規則正しいヒダが波打っており、人間が作った何かの記念碑のようですらある。
小さなヒレが生んだ芸術作品
この不思議なサークルは、オスのフグがメスに求愛しようと、ときに1週間以上もの期間をかけて作り上げるものだ。小さなヒレで水流を起こし、砂を舞い上げることで形を少しずつ変化させ、根気よく海底に模様を刻んでゆく。 おおよその形ができあがっても、最後の仕上げが残っている。盛りあがった土手の頂点に貝殻を乗せていき、あたかもデザートにトッピングを施すように飾り付ければ完成だ。PBSによると、「貝殻は単なる芸術的な装飾ではない」のだという。「稜線を安定させ、中心をかき乱してしまう水の流れを遅くする働きがある」 小さなフグの身体で直径2mの芸術的なサークルを完成させるには、相当な体力が必要だ。求愛の場を完成させたスタミナのあるオスだけが、メスの興味を惹くことができる。メスは気に入ると、中心部に集められたひときわ細かな砂の上で卵を産む。