「マウス研究」から見えてきた「肥満」と「次の世代の自閉スペクトラム症」の関係性…そのあまりにも意外すぎる「突破口」
ジヒドロビオプテリンは特効薬になりうるか
また、ロイテリ菌の投与によって体内でビオプテリンとジヒドロビオプテリンと呼ばれる物質の合成が促進され、増加することがわかりました。とくにジヒドロビオプテリンは、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンを産生する際に必須な物質です。 そこで、自閉スペクトラム症モデルマウスにジヒドロビオプテリンを投与したところ、他個体への好奇心が回復し、自閉スペクトラム様の症状が抑えられました。一方で、体内に存在するジヒドロビオプテリン合成酵素を阻害してジヒドロビオプテリンの産生を抑制すると、ロイテリ菌の効果が失われました。つまり、ロイテリ菌は体内でのジヒドロビオプテリンの合成を促進し、自閉スペクトラム様の症状を抑制している可能性が示唆されたのです(※参考文献6-6)。 これらの研究成果は、マウスを用いた実験から得られたものです。この実験結果がヒトでも当てはまるのか、今後の研究の進展が待たれます。 ※参考文献 6-4 Buffington SA et al., Cell 165, 1762-1775, 2016. 6-5 Sgritta M et al., Neuron 101, 246-259, 2019. 6-6 Buffington SA et al., Cell 184, 1740-1756, 2021. * * * 初回<なぜ「朝の駅」のトイレは混んでいるのか…「通勤途中」に決まって起こる腹痛の正体>を読む
坪井 貴司(東京大学大学院総合文化研究科教授)