【トリビュート】稀代の天才カーデザイナー マルチェロ ガンディーニを偲ぶ
その他にもガンディーニの手がけたクルマは多く、そのすべて網羅するのは大変な作業なのだが、市販車に限って一例をあげればイノチェンティ ミニ90/120、アルファロメオ33ストラダーレ、BMW初代の5シリーズ、3世代目のマセラティ クアトロポルテ、マセラティ シャマル、イノチェンティ ミニなどなど、名車と呼ばれる数々に、彼は関与していた。 「自動車は私たちが行きたい場所に自由に連れて行ってくれる、マジカルで自由な存在。あとのエモーショナル名部分はすべて付け足しといっても良い」。 上記の車たちを見ると、いつも僕の頭の中には彼のそんな車への愛が詰まった素晴らしい言葉を思い出す。
その他、ガンディーニは自動車以外にもインダストリアルデザインを行っているが、そんな中でも有名なのは1991年に手がけたヘリコプターで、これには「エンジェル」という名前がつけられている。この名前は前年1990年に手がけた「ランボルギーニ ディアブロ」の悪魔と対比させてつけたのだというが、この話題が僕の知る中で唯一のガンディーニの、ちょっとしゃれっ気が感じられるトリビアかもしれない。それほど物静かで真面目なイタリアンだったのである。
亡くなる直前の今年1月12日、ガンディーニはトリノ工科大学から機械工学の名誉学位を授与された。最後の人前でのスピーチとなったその日に彼は以下のようなことを述べている。「新しいデザインをするときは過去のことを学ぶこと。だが自分のデザインをするときには周りのことに惑わされず、人と同じことをするな」 また、彼は鉛筆でアイディア(デザイン)を紙にスケッチすることを止めてはならない、と言っていたという。そこからすべてが始まるから、とも彼は言う。今も天上で鉛筆を走らせているのだろうか。 トリノに生まれ、最後までトリノで生きた偉大なデザイナーに、心からご冥福をお祈りいたします。
大林晃平