【体験談】大学が「郊外」にあるからこそ…お祭りや割引、都心とは違う学生生活の魅力
キャンパスの立地によって、大学での学びや、大学生活も大きく変わります。最近は都市部にキャンパスを移転する大学が少なくありませんが、郊外にあるからこそ、学びに生かせることもあるのです。 【写真】「めっちゃ山の上にある」キャンパス、それでも…都心部の志願者を集める大学
「ツルブン」の愛称で親しまれる都留文科(つるぶんか)大学は1960年、市民の働きかけによって開学した全国でも珍しい公立大学です。キャンパスがある山梨県都留市は、人口約3万人の地方小都市。人口の約1割を同大学の学生が占めており、地域にとっても、大学はなくてはならない存在となっています。 経営企画課の安富博史さんはこう話します。 「学生たちが地方で暮らし、地域と連携して実践的に学ぶことに大きな意義があると考えています。そこで、都留文科大学ならではの地域とのつながりを生かして、地域創生に力を入れた学びを実践しています」 例えば、学生が地域の子どもたちの放課後の居場所づくりに取り組んだり、子どものための祭りを開催したり、カフェやゲストハウスを運営したりと、地元の人と触れあう機会が多くあります。学生の約9割が、日本全国から集まっているのも特徴で、卒業後はまたそれぞれの地域に戻って活躍しています。 学生の一人、教養学部地域社会学科3年の伊藤萌々香(ももか)さんは、都留文科大学から約1100キロも離れた長崎市で生まれ育ちました。親元を離れて移り住んだ都留という都市で、地域と関わりながら学ぶキャンパスライフについて聞きました。
「地域社会」を学びたい
――都留文科大学を志望した理由を教えてください。 高校の時に新聞部に所属し、地域にフォーカスした取材活動を経験したのをきっかけに、地域社会について学べる大学を志望するようになりました。私の地元・長崎市は坂の多い街で、新聞部の取材では、坂の上に増えている空き家を再活用する人たちに会いに行ったり、開業間近の西九州新幹線について、県庁や建設現場に話を聞きに行ったりしました。また、長崎には平和教育が根づいているので、原爆投下の当時、女学生だった人に話を聞いたりもしました。 ――地域に密着した取材を行った経験から、地域社会について学ぼうと考えたのですね。 観光や地域創生への関心から、そうした学びに焦点を当てられるところを選びました。ただ、大学では地元から離れてみたいという思いもあったので、山口大学など、九州の他県の大学を見ていました。そのような時に高校の先生に「都留文科大学という大学があるよ。新聞部で活動していたことをいかせるのでは?」とアドバイスされ、進学を決めました。 ――自然に囲まれた山梨県都留市は、県庁所在地の長崎市とは環境が異なると思います。期待と不安の両方があったのではないでしょうか。 コロナ禍でオープンキャンパスに行けなかったので、どのような環境なのか楽しみにしていました。同時に、これまでの生活からガラリと変わってしまうことへの不安もありました。実際に、入学後の1カ月間はホームシックにかかってしまいましたが、友達が増えるにつれ、すぐに抜けることができました。都留文科大学には北海道から沖縄まで、いろいろな地域から学生が来ているので、それぞれの文化の違いを知ったり、交流が生まれたりして楽しいんです。 生活に慣れることができたのは、アルバイトも大きいと思います。1年次から週3、4回、飲食店でキッチンのアルバイトをしているのですが、バイト先にも都留文科大学の学生が多く、それも安心感につながっています。都留文科大学の学生は、都留市の人口の約1割を占めていて、街の人に愛されている実感があります。「大学生です」って言うと、「文大(ぶんだい)さんですか?」と聞かれたり、お店でも「文大生は何%オフ」などとサービスしてもらえたりするところも多いです。 ――キャンパスの印象はどうですか。 なだらかな山の斜面に、ゆったりとキャンパスが広がっていて、自然が豊かです。2023年には、市民の方々も使えて交流ができる「THMC(Tsuru Humanities Center)」という新しい施設もできました。大学と社会をつなぐ教育研究の拠点で、ここにあるVR機器が整備された新施設「デジタルコモンズ」では、ゼミの講義を受けることもあります。 私の所属する「環境教育ゼミ」では、田開(たびらき)寛太郎准教授の指導のもと、地域環境と教育について学んでいます。現在は「教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)」といって、ICTなど情報化が進む教育現場について学んでいます。夏には長野県で、子どもたちがデジタル系の機器を扱う際のサポートをするフィールドワークに行く予定です。