宮沢氷魚が村上春樹作品で感じたこと「無意識で人を傷つける瞬間はある。それでも自分らしく」
俳優の宮沢氷魚さんがAmazonオーディブルによる小説の朗読に初挑戦。村上春樹氏の人気作品『国境の南、太陽の西』を収録しました。声だけの世界で演じることに感じた難しさとおもしろさ、そして村上作品の魅力とは? PEOPLE NOW
2017年のドラマデビュー以来、年を重ねるごとにその存在感を増す俳優・宮沢氷魚さん。モデルもこなす恵まれた体型だけではなく、日英バイリンガルというスマートさも兼ね備えた彼が今回初挑戦したのがAmazonオーディブル(以下「Audible」)による小説の朗読という仕事。挑んだのは村上春樹作品『国境の南、太陽の西』。幼少期の初恋から始まりいつしか不穏な恋愛へと主人公が進んでいくストーリーを、朗読という場でどう表現し、その経験にはどんな気づきがあったのか。そして朗読や演技にかける俳優としての思いとは? 30代の今の気持ちをじっくりとお聞きしました。
村上作品が持つ言葉の重みや豊かさを、改めて理解した
── 今回Audibleで村上春樹『国境の南、太陽の西』を朗読されましたが、これまで村上春樹氏の小説を読んだことはありましたか? 宮沢氷魚さん(以下、宮沢) 以前『ノルウェイの森』と『海辺のカフカ』を読んだのですが、当時まだ中学生ぐらいで、内容が難しく正直、理解できない部分もありました。ただ今回久しぶりに村上春樹作品を読んで、村上さんの言葉の重みというか、その豊かさを改めて理解できた気がします。作品の素晴らしさを感じながら、時を経て今やっと理解できるようになった自分がいることを認識して、僕もちょっと成長したのかなと(笑) ── 言葉の重みという意味では、ご自身も言葉を操る俳優として活躍されています。今回、声だけの世界で演じることに、何か難しさやおもしろさなど感じたことはありますか? 宮沢 いや難しかったですね。確かに言葉あってのお芝居ですけれど、映像や舞台は言葉と同時に表情だったり、音楽や背景などの表現を助けてくれる環境が整っている。そういったいろいろなものに助けられて表現しているものだと思うんです。でも今回は本当に自分の声だけ。すごくシンプルだからこそ、嘘もばれてしまう。うまくやろうとしても見透かされてしまうので、今の自分ができる最大限の表現をしようという意識で挑みました。