いかにもドイツ車らしい──フォルクスワーゲン・ゴルフⅡGTI試乗記
フォルクスワーゲン「ゴルフⅡGTI」は、今乗っても魅力的な1台だった! ドイツでおこなわれたイベントで試乗した小川フミオがリポートする。 【写真を見る】極上のゴルフⅡGTIの内外装など(23枚)
楽しさが多層的
今、若い人を中心に人気の高いクルマが、フォルクスワーゲンのゴルフⅡだ。本社のCEOも「いいクルマだから」と、人気ぶりを認めているほど。なかでもレア度が高めで、人気も高いGTIはどうなんだろう……。 私が、ゴルフⅡGTIに試乗したのは、2024年6月下旬。フォルクスワーゲン(VW)のクラシック部門が管理する状態の良い個体を、ドイツで開かれたゴルフ50周年イベントのタイミングで、公道試乗できた。 ゴルフⅡは、私より詳しい人は多いだろうが、1974年にゴルフⅠが発表発売されたあと、1983年のフルモデルチェンジで登場した2代目だ。 ゴルフⅡの魅力は、どんなところにあるだろうか……数えていくとかなり多い。内外装のクオリティがあがった点、向上したエンジンパワー、しっかりした足まわり。モデルによっては、ABS、パワーステアリング、4WDなども選べた。 なにより、フォルクスワーゲン自身の分析によると、“うまくゴルフⅠの特徴を継承したボディデザイン”が成功の要因という。たしかに、丸みを帯びたボディと、丸形ヘッドランプによるちょっとキュートなフロントマスクは、いまゴルフⅡを買おうというひとがまず挙げる特徴だ。 GTIも、84年にフルモデルチェンジした。ゴルフⅠのとき、フォルクスワーゲンはGTIの成功に懐疑的で、限定かつ5000台も売れればいい、なんて思っていたそうだ。ところがドイツ市場だけとっても、77年単年で2万2000台を記録する大ヒット。トータルで46万2000台が世界で売れた。 ゴルフⅡにおいても、というわけで、GTIには力が入った。ゴルフⅠのGTIは最後期といえる82年にエンジンが、1588cc(110ps/81kW)から1.8リッター(112ps/82kW)に換装されていた。 ゴルフⅡのGTIでは当初おなじエンジンを引き継ぎ、85年型からは触媒を装着したことで出力を107ps(79kW)に落としている。最大トルクはほぼ不変で、15.4mkg(151Nm)だ。88年にはエンジンを4バルブ化して、触媒装着車でないモデルは139ps(102kW)に、装着車でも129ps(95kW)にパワーアップした。 フォルクスワーゲンクラシックが用意してくれたのは、89年のGTI。出力は107馬力というから、じっさいは88年型である。ゴルフⅡの特徴である広いトレッド(ゴルフⅠより20mm以上拡がった)による力強いスタンスが印象的だ。 サイドウインドウを寝かせた、いわゆるタンブルフォームのキャビンも、メリットとしてはボディ幅が強調されている(デメリットは後席乗員のヘッドルームに圧迫感がある)。 乗り込むと、ドアの開閉感やシートの座り心地、ダッシュボードのつくりは、Ⅰより格段に質感が向上しているのがわかる。ゴルフボールの形状をしたシフトノブは、Ⅰとおなじだけれど、それを操作して走り出したときの低回転域でのトルクの太さも、あきらかにⅠと一線を画している。 私が乗ったモデルは、先述のとおり、シリーズ中もっともアンダーパワー(非力)。エンジンの回転フィールも、ⅠのGTIのほうが軽快に、上までさっと吹け上がる。Ⅱは、回転上がりがややもっさりしている。 走りやすさの点で、Ⅱはかなり良好。最大トルクは3250rpmで発生するのだけれど、2000rpmあたりで、市街地で使うには十分な力が得られると感じた。 速度が上がっていくと車体の上下動が落ち着いて、乗り心地がよくなっていくのは、いかにもこの頃の、高速移動重視型のドイツ車らしいといえばいいだろうか。低速には低速での、中速では中速での、少しずつことなる味わいがあって、楽しさが多層的と感じられた。 この時代のゴルフは、合成樹脂のダッシュボードもクオリティがあまり低下してなくて、たしかにこれなら、性能的には今日の交通環境でも十分に実用になると、あらためて感じ入った。