「できて当然」と自分にかけたプレッシャー、解きほぐしてくれた元マラソン日本代表の言葉「試合も練習だと思って……」
ラストの位置取りを悔やんだ800m
翌日以降の800mに向けては、とにかく寝て疲労を抜くことに注力したという。「1500mが終わった夜も、次の日も、体が火照っていてあまり眠れなかったんですけど、一切目を開けずに、頑張って我慢して、寝られるまで待機していました。大谷翔平選手(現・ドジャース)もいっぱい寝ると言っていたんで、自分もしっかり寝ようと」。目を閉じたのは両日とも夜9時ぐらい。実際に何時間眠れたのかは分からないが、朝は6時に起床した。 翌日の男子800m予選を順当に通過し、「二冠」がかかった決勝。「意識しすぎたら良くないと思ったので、とにかくこのレースに勝つことだけに集中していました」 最も外側の8レーンから最初の100mをセパレートで走った後、オープンレーンに。この時点で東は、筑波大学の木佐亮太(4年、出雲)に続く2番手だった。最初の1周を54秒で通過。バックストレートで予選トップのタイムをマークした鹿屋体育大学の岡村颯太(2年、致遠館)や前回王者の環太平洋大学・前田陽向(3年、洛南)が前へ。木佐が下がり、残り200mで東は3番手になった。この場面を東は悔いる。 「ラスト(の直線)は風が強かったので『前にいた者勝ち』と思っていました。600mのところで2人が前に行ったんですけど、あそこで前か、2人の間に入れていたら行けたと思います。対応がワンテンポ遅れて、そのまま逃げ切られてしまいました。ミスではないんですけど、あそこで勝敗が決まったと思います」
思い通りにいかないとき、尾方監督がかけてくれた言葉
広島経済大には3学年上の先輩で、東と同じ兵庫出身の山﨑優希(現・KAGOTANI)に憧れてやって来た。「兵庫選手権で見たときに、すごくフォームがきれいで。『自分が理想とする人だな』と思いました」。1500mと800mともに大学記録(3分41秒47、1分47秒13)は山﨑が持っている。東は今大会の800m決勝で1分48秒27をマークし、山﨑がそれまで持っていた大会記録(1分48秒77)を更新したが、「ベストを抜かないと、まだ勝ったとは言えないです」と悔しさをにじませた。 尾方監督からのアドバイスは、東にとって欠かせないものとなっている。2年目の昨シーズンは9月の日本インカレ800mで3位、1500mで9位と好成績を収めたものの、今シーズンになると「できて当然」と自分自身にプレッシャーをかけてしまい、5月の静岡国際では思い通りのレースを展開できず、もどかしさを感じてしまった。そんなとき「監督が『試合も練習だと思って走ったらいいよ』と言ってくださったんです」。肩の力が抜け、今大会の好走につながったと本人は分析している。 中距離専門だが、駅伝に向けても意識は高い。現段階では9月末の「Yogibo Athletics Challenge Cup 2024」で800mに出場した後、2週間後の出雲駅伝に向けて仕上げることを想定している。トラックと駅伝の両立方法について尋ねると、「夏に入るまで、試合のない週は朝練でしっかりとジョグを踏んで、疲れた状態でポイント練習をすることによって、練習の強度も自然と上がっています」と話した。 ロードでも実力を発揮するためには、尾方監督との緊密なコミュニケーションも不可欠で「自分のノウハウと監督のノウハウを合体させていきたいです」と東。今後はトラックのみならず、駅伝でもその名を全国に広めたい。
2024日本学生陸上競技個人選手権大会 男子1500m決勝
6月14日@レモンガススタジアム平塚(神奈川) 優勝 東秀太(広島経済大3年)3分49秒40 2位 岩下和史(早稲田大2年)3分49秒51 3位 加世堂懸(明治大2年)3分49秒68 4位 中村晃斗(志學館大2年)3分49秒90 5位 大塚直哉(立教大3年)3分50秒56 6位 高嶋荘太(環太平洋大3年)3分52秒24 7位 小河原陽琉(青山学院大1年)3分56秒13 8位 金樹(札幌学院大4年)3分57秒69
井上翔太