40代以上の2人に1人が「突然の失明リスク」を抱えている…自覚症状がないまま視力を奪う「緑内障」の本当の怖さ
目の健康のためには、どんなことに気をつければいいのか。眼科医の平松類さんは「視力は短期のうちに急激に悪化するケースが多い。特に視力が高い人ほど『視え方の変化』をスルーしがちなので、注意が必要だ」という――。 【図表】あなたは大丈夫?「アイフレイル」チェックリスト ※本稿は、平松類『視る投資』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。 ■「サイン」を放置し続ければ最悪、失明に至る 「近視もないし、ドライアイになったこともない。目は生まれつき超いいんです」 そんな人にこそ聞いてほしい話があります。 「視る力」、いわゆる視力の高さと、目の健康には相関関係がほとんどありません。 たとえば、100mを9秒台で走れるウサイン・ボルト選手は「まったく病気にならない」わけではないはずです。健康管理を怠れば、いくら驚異的な身体能力をもつ人でも、病気にかかることはあるでしょう。 「どれだけ遠くが視えるか」という視力は、いわば「100mを何秒で走れるか」というような身体能力の一つです。 つまり、たとえ2.0の視力がある人でも、目のケアを怠れば目の病気になります。 そのわかりやすい兆候は「視え方」の変化です。 たとえば視力の低下、視野の欠け、まぶしさ……。 それらのサインを放置し続ければ、失明に至ることだってあるでしょう。 残念ながら「今の視力がいいから、何もしなくてもずっと健やかな目のまま」とは限らないのです。 特に視力については「失明する直前まで1.0くらい視えていたのに、なぜ急激に視力が低下したのか」と患者さんが驚かれるケースがよくあります。 目の病気のせいで視力が落ちるときは“急降下”と覚えておいてください。 ■視力は、短期のうちに急激に悪化する 体の言い分としては……。視力の急激な低下は「それくらいわかりやすいサインでないと、本人に気づいてもらえないから」ということなのかもしれませんね。 ですから、自覚症状がなくても定期検診(健診)で測定することが大事なのです。 実際の病名を挙げておきましょう。 日本人の失明原因1位の緑内障、2位の糖尿病網膜症、3位の網膜色素変性、4位の加齢黄斑変性(加齢によって黄斑に老廃物が溜まりやすくなり、視力が落ちる病気)。 これらはすべて、徐々に目の健康が失われていきますが、その間、あまり視力は落ちません。不思議に思われるかもしれませんが、末期に近くなってから、急激に視力が落ちるのです。 たとえば私の患者のAさんは「視力が1.0もあるから問題ない」と思い、健診時もオプションの眼底カメラ検査は受けていませんでした。「目には自信があるから、追加料金を出してまで検査を受けることはない」と思っていたようです。 あるときAさんが急激な視力の低下を感じ、受診してくださいました。調べてみると、実際のところ極端に視力が落ちていました。そして検査の結果、「かなり進行した緑内障」だとわかったのです。 このように「私はもともと視力が高いから」と安心して過ごしていた人が、緑内障を突然発症し、無自覚のうちに進行し、気づけば視力が0.3、0.1、0.0……。 短期のうちに急激に悪化するケースが多いのです。 「日常生活で、いったいなぜちょっとした視力の低下に気づけないのだろう」 そう思いませんか。それには“優秀すぎる”人体の仕組みが関係しています。