「映画館は嬉しいし、フードコートもいいけど…」 所沢に誕生した「エミテラス所沢」。店のチョイスはいいものの”普通”との声が続出している理由とは?
しかし、この空間、イベントが行われていないときは、「無の空間」である。特にそこで何があるというわけでもなく、ただただ人がいない空間になっている。 椅子やテーブルも少し置かれているのだが、圧倒的に「何もなさ」が、上回ってしまっており、非常にもったいなく感じる。大型ディスプレイを用いていろいろと遊ぶこともできるようなのだが、遊んでいる人は少なかった。 私は、こうした「何もない」空間を否定するわけではない。むしろ、テナントで敷き詰めがちな商業施設の中で、こうした「余白」をつくることは重要だと思う。とかく「意味」を求められがちな現代の都市において、「何もしなくてもいい自由」が担保される空間だからだ。
でも、それは「ただ何もない」のとは違う。重要なのは、それによってさまざまな人が集う自由で「居心地のよい」場所を作ることだ。そうでなければ、ただの寂しい空間になってしまう。 例えば大阪に誕生した「うめきた公園」も、何もない空間がひろがっている。広大な芝生がメインの空間だ。 けれども、そこでは芝生が敷き詰められていることで人々が寝っ転がったりできるし、あるいは椅子の無料の貸し出しがあったりして、人々がそこで気持ちよく滞留できる工夫がある。何より、うめきた公園は全体の風景のデザインにこだわっていて、人々が居心地のいい空間を作る工夫がなされている。
公園と商業施設では、その開発のスキームが大きく違うから比較するのは酷かもしれないが、我々消費者から見れば、どちらも同じ空間だ。その意味で、エミテラス所沢はこうした「滞留」スペースとしての価値を向上させたほうがいいのではないかと感じるのだ。 4階にある「そらくもひろば」でも似たことを感じた。そこは屋上公園のようになっており、遊具などがあって子どもが遊べる広場になっている。しかし、どこか窮屈な感じも否めず、もっと工夫すれば、より子どもたちが伸び伸び遊べる自由な空間になるのに……という感覚を持ってしまった。