収益性をめぐるジレンマ。一部のブランドが「 卸売 の拡大に慎重」になっている理由
リスクを回避し、自分で手綱を握れる場所に
Amazonのようなオンラインマーケットプレイスで販売を行っている、ある健康志向の食料品ブランドの創業者は、現在は新しい大手小売業者と提携する自信がないため、デジタル販売の拡大にフォーカスしていると述べた。「少なくとも私個人としては、オンラインのメリットのほうがはるかに魅力的だ」と話す。「資金がどこに使われているかが分かり、まさに望む顧客と適切なタイミングで接触でき、投資がより予想どおりで実りがあるものになると思える」。 とはいえ、「現在はウォルマートを検討中だ」とのことだ。しかし、このブランドがウォルマートと契約を結べるかどうかは、バイヤーのスケジュールに合わせてブランドが開始時期を見いだせるかどうかにもよる。毎年のライン見直しは、このブランドが属するカテゴリーの需要が高まるシーズンの合間に行われる。「バイヤーは、季節商品のあいだで刷新しようとは思っていない」と、この創業者は述べた。 また、全体として卸売に関しては「リスクは取りたくない。慎重になっており、『もちろんやりたい』とはとても言えない」とも語った。代わりに、Amazonのようなより管理しやすいチャネルに投資したり、スライブマーケット(Thrive Market)のようなマーケットプレイスで有機的に安定した売上を生み出したりすることで、ブランドは顧客獲得を続ける予定だという。これにより、ウォルマートのような大型小売店と契約を結べるようになるまで、成長の勢いを維持しつつコストを比較的安定させることができるという。 「オンラインプラットフォームは何がどう動いているかわかりやすく、ある程度は自分で手綱を握れる」と、この食品ブランドの創業者は語った。
いまは成長が抑制される時期?
しかしながら、企業は可能であればウォルマート、ターゲット、コストコ(Costco)などの大手小売店で全国的な流通を確保することをめざしている。卸売は費用のかかる取り組みだが、可能な限り大規模な取引先に集中して時間とお金を使うほうがブランドにとっても良いことだという考え方によるものだ。 それでも卸売に関しては、どれくらいだと多すぎるのかという疑問が続いている。「一度にひとつの主要市場を狙うという考え方は、現状からすると時代遅れだ」とマッカーシー氏は述べた。「しかし取引先を維持するには、より多くの資金を調達する必要がある」。 そしてもちろん、いつ新しい卸売チャネルに参入するかに関する決定権は、必ずしもブランド側にあるわけではない。前述の食品ブランドの創業者によると、このブランドが属するカテゴリーのバイヤーも、とくに抑制的な経済情勢においては「非常にリスクを嫌う」とのことだ。この創業者が会うバイヤーのなかには、卸売取引の交渉時に活用できる優れたツールとしてよく宣伝されているオンライン販売データに、まったく興味がない人もいるという。 「夢のような取引先や最適な取引先、とくにファンを見つけて育てるチャンスを何度も与えてくれるとわかっているバイヤーが相手なら、大きな取引を開始するつもりはある」と、この創業者は語った。しかし、「いまは本当に成長が抑制される時期だ」とも言い添えた。 [原文:Why some brands are being more cautious about wholesale expansion] Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:島田涼平)
編集部