収益性をめぐるジレンマ。一部のブランドが「 卸売 の拡大に慎重」になっている理由
自社のコントロール下に置くか、焦点を絞った拡大に賭けるか
CPGスタートアップやナショナルブランドが店舗で顧客を獲得するのを支援するプラットフォーム、ウィーストック(WeStock)の共同創業者でCEOのキャメロン・マッカーシー氏は、「一部のスタートアップはキャッシュを節約するため必要に迫られてD2Cに戻った」と述べている。 問題の核心にあるのは、新しい小売店への参入にかかるコストが高いという事実だ。ブランドはより多くの在庫を生産し、場合によってはより多くのフィールドスタッフを雇用して、卸売の開始を宣伝するためにより多くのマーケティング活動を行う必要がある。そして現在、ブランドが卸売の開始に必要な資金を調達する選択肢は、たとえば3年前と比べて多くはない。 ベンチャーキャピタリストは依然として支援するスタートアップを慎重に選んでいる一方で、コーマス関連のプラットフォームを提供するアンプラ(Ampla)など一部の資金提供者は、融資を減らしているという。 マッカーシー氏は、「小売ベンダーの観点から見ると、ブランドが卸売から撤退してD2Cや小規模なデジタルチャネルに再びフォーカスするのは、成長の兆しとは言えない」と述べ、「あと数カ月は続けようとする初期のサインのように思える」と続けた。これらのブランドのなかには、自社でよりコントロールできるオンラインマーケティングに資金を注ぎ込み、売上を伸ばそうと考えているところもある。「これは、採算をとってから、おそらく将来は小売に再びフォーカスするひとつの方法だ」。 しかし同氏は、「ウィーストックのクライアントブランドには180度方向転換して小売業から完全に撤退するのではなく、また、できるだけ多くの卸売パートナーを追加するのでもなく、利益率の高い少数の主要な小売店で流通を加速するようアドバイスしている」と述べた。「各ブランドはありとあらゆる全国チェーンと提携する必要はない」と同氏は言い、「大手小売業者1社と提携できるだけの資金とマーケティング予算を確保するだけでいい」と話す。 こうした状況があるなか、それでも全体として卸売流通は量的に成長しており、消費者向けブランドにとってそれは引き続き最優先事項となっている。オンライン卸売マーケットプレイスのニューオーダー・バイ・ライトスピード(NuOrder by Lightspeed)が2024年5月に行ったブランドの調査によると、依然として卸売はブランドにとってもっとも収益性の高い投資チャネルだった。卸売パートナーシップは平均すると企業総売上高の60%を占めているという。ただし、この調査では卸売流通のプロモーション費用が上昇していることも示されており、また、ブランドによるマーケティングアウトリーチが昨年より7%増加していることも明らかになった。