首都の通勤線「廃止」フィリピン国鉄の残念な現状 政府に見放され、新路線建設へ用地明け渡し
これが本当の「攻めの廃線」かもしれない。フィリピン国鉄(PNR)の在来線、マニラ首都圏および近郊区間にあたるトゥトゥバン―アラバン間・約28kmが今年3月27日、営業運転を終えた。 【写真を見る】元常磐線各駅停車の203系はアメリカGE製の機関車に牽引され客車として使用。マニラ首都圏とは思えないほどのどかな光景を行く「通勤列車」 これは、JICA(国際協力機構)とADB(アジア開発銀行)の協調融資によって建設の進む「南北通勤鉄道延伸事業」(約112.7km)のうち、南側区間にあたるソリス―カランバ間(約56km)の工事を加速させるためのものだ。運行の終了後は、レールなどの撤去が急ピッチで進んだ。PNR在来線のアラバンより南、カランバまでの区間は2023年に先行して運行を取りやめている。
■新線はマニラ版「つくばエクスプレス」? この通勤鉄道延伸事業は、すでに着工済の「南北通勤鉄道事業」(マロロス―トゥトゥバン間・約37.7km)と合わせ、PNRの在来線用地を流用して高架線を建設する。 【写真】まるでローカル線のような「首都の通勤路線」を走る元常磐線の203系や朽ちたキハ52形気動車。駅には対照的な最新鋭の「南北通勤鉄道」をPRするディスプレイが 両事業が完成すると、クラーク国際空港からカランバまでを結ぶ全長約147kmもの通勤新線「南北通勤鉄道」(NSCR)となる。10月16日には、JR東日本がフランス・パリ交通公団の子会社、RATP Devと同事業の運行・維持管理事業への共同入札に向けた覚書を締結したと発表した。
非電化・狭軌の在来線に対し、電化・標準軌を採用するNSCRは設計最高時速160kmで、あたかもフィリピン版「つくばエクスプレス」といった様相だ。専用車両を用いた空港アクセス特急のほか、一般型車両でも優等列車が設定される予定で、現在は車で4~5時間かかっている同区間を100分程度で結ぶ計画だ。 既存の鉄道をすべて作り変えるという世紀の巨大プロジェクトである一方、NSCRはPNRの用地を活用するため、PNRの所有となるという点に一抹の不安を覚えるのも事実である。