日本人2人の月面着陸が正式決定、有人探査車提供も 日米政府が合意「なるべく早期に」
到達点が高ければ、課題もまた大きい。巨額を投じ、日本人は何のために月面に行くのか。これまでも期待が高まり、当事者の動きなどが報道されてきたが、話の大きさのわりに国民的な盛り上がりは今一つだ。有人宇宙活動が将来にわたり実を結ぶためにも、科学技術や産業経済、外交、文化といった多彩な側面で、これから議論が深まることが望まれるだろう。
月の極域の水を採取し、太陽電池で水素と酸素に電気分解すれば燃料として、将来の月面開発や火星飛行に使えるとの期待が高く、月探査の意義の一つとして説明されている。一方、研究者の中には「資源として利用できるほど、水はないのでは」といぶかる声も聞かれる。これまでの月探査の議論はやや“皮算用”の側面があるともみられ、厳しい検証を重ねながら活動を進めるべきだ。
アルテミス計画の進捗に伴い、有人活動の関心はISSのような地球低軌道から月、火星へと拡大していくだろう。一方、今後はISSの実績を踏まえ、低軌道の宇宙基地は民間主導で発展すると期待される。3月末でJAXAを退職した若田さんは、米宇宙企業「アクシオムスペース」のアジア太平洋地域の飛行士兼最高技術責任者(CTO)に就任した。低軌道の活動の重要性が色あせることはない。
日本人は古来、文学などを通じて月を見つめ、感性を研ぎ澄ませてきた。月に降り立った際の第一声は果たして、どんなものになるか。今から楽しみでならない。 (草下健夫/サイエンスポータル編集部)