日本人2人の月面着陸が正式決定、有人探査車提供も 日米政府が合意「なるべく早期に」
ISS船長に、若田さん(2014年)や星出彰彦さん(21年)が就任。日本人飛行士は地上でも活躍し、NASA管制室で飛行士と直接交信するCAPCOM(キャプコム)を務めることが多く見られるようになった。飛行士育成や管制などの運用技術、管理ノウハウを高めてきた宇宙航空研究開発機構(JAXA)のチーム力も大きい。
こうのとりを打ち上げたH2Bロケットにみられる輸送技術、また月周回機「かぐや」の成功(2007~09年)や、記憶に新しい「スリム」の月面軟着陸(今年1月)といった宇宙科学の技術も世界の評価を高めてきた。
得意技術を磨き「欠かせない国」に
そして日本人が月に立つ。月面に至るまでのロケットや宇宙船は他国に頼るため、アポロのような一国の独力ではない。しかし国際協力が前提の計画であり、日本が不可欠かつ重要な存在と認知されての実現だ。当然、向井さんが回顧したような黎明(れいめい)期の“連れていってもらう”状況とは本質的に異なる。 決定の背景には、人種や性別など属性の多様性「ダイバーシティー」を重視する気運の世界的な高まりも感じられる。若田さんがISS船長に就任(2014年)した際には、「日本はISSへの貢献度が大きいわりに、欧州(09年)やカナダ(13年)に比べ就任が遅すぎた」とささやかれた。政府関係者のこれまでの外交努力も大きかったに違いない。
一方、月上空の基地「ゲートウェー」への日本の貢献は(1)居住棟への環境制御・生命維持システム、熱制御機能、カメラの提供、(2)居住棟などへのバッテリーの提供、(3)物資補給機の運用――が求められている。いずれも日本の得意領域といえる。ルナクルーザーの開発も、自動車産業の強い日本が本領を発揮する展開だ。日本が一国で全ての有人技術を網羅することはハードルが高すぎるにせよ、有人宇宙活動に欠かせない複数の得意技術を今後も磨いていけば、不可欠の国として将来にわたり世界に貢献でき、結果的に外交上の地位も高まるだろう。