日銀の空白埋める国債投資家を確保へ、多様化が不可欠-奥理財局長
(ブルームバーグ): 国債の発行などを担う財務省の奥達雄理財局長は、日本銀行が国債買い入れの減額方針を決めたことを踏まえ、国債の安定消化には投資家の多様化が欠かせないとの認識を示した。銀行が買いやすいように年限を短期化する場合でも、国が抱える金利リスクなどに注意が必要と述べた。
奥局長は、国債の保有を幅広い投資家層に広げることは「安定的に市場が推移するための一つの大事な条件だ」と指摘した。さまざまな投資家がいれば「一つの現象に対しても反応が多様になり、一方向に向かって大きく動くことが避けやすくなる」と語った。ブルームバーグのインタビューに3日応じた。
日銀の資金循環統計によると、3月末の国庫短期証券を除く国債・財投債の日銀保有比率は53.25%と過半を占める。日銀が大規模な金融緩和を通じて国債の保有比率を高めてきた一方で、かつて約4割を保有していた銀行などの預金取扱機関の保有比率は1割程度に低下した。今後、日銀が国債買い入れを減らす中で、日銀に代わる安定的な投資家を確保することが課題となる。
銀行の国債保有促進へ年限短期化、日銀減額方針で提言案-財務省
財務省の「国の債務管理に関する研究会」は6月、今後の国債の安定的な発行と消化に向けた取り組みに関する提言を公表。この中で「銀行が国債保有を増やしていく余地は一定程度存在」すると指摘する。銀行は負債側の年限が短いことから、資産として保有する国債の年限も比較的短いものが中心となる。このため、発行年限を短期化させることで銀行が買いやすい環境を整えることも必要と説く。
もっとも、拙速な年限短期化は、発行する国側の借り換えリスクや金利リスクが高まることにつながる。奥局長が「効率的な財政にならない」と話すように、金利上昇局面が見込まれる時に年限を短くするのは「中長期的な調達コストの抑制」を掲げる国債管理政策にそぐわない。
奥局長は「銀行が買いやすくなる状況を作るのも大事だが、国が被らなくてもよいコストはできるだけ払うべきでもないので、その両方を成り立たせなければいけない」との見解を示した。その上で、年限の短期化を進める場合でも「市場環境や投資家のニーズを踏まえ、しかるべきタイミングで具体化していく」と述べた。