「冤罪のリスクも…」警察が弁護士に“被疑者との接見”で「スマホ使用」を禁止 “他人ごと”ではない「接見交通権・秘密交通権侵害」見逃されがちな問題
接見交通権は「冤罪防止」のためにも重要
福原弁護士はまた、日本の刑事司法における実務の運用の実態からしても、接見交通権は、一般国民の人身の自由を守り、冤罪や違法捜査を抑止するうえできわめて大きな意義をもつという。 福原弁護士:「現状の運用は、『犯罪の嫌疑』があれば逮捕・勾留を認めてしまう傾向が強いといわざるを得ません。逮捕・勾留に必要な『令状』を発付する裁判官・裁判所も、罪証隠滅・逃亡のおそれが軽微であっても逮捕・勾留を認める傾向があります。 被疑者段階で、最大23日間、身体拘束されてもしょうがないだろうという運用が行われていると評価せざるを得ません。 さらに、『袴田事件』等の冤罪が事実として発生してきているのに加え、最近でも違法な取調べが次々と明るみになっています。私自身も、刑事弁護を多数担当していますが、その際に捜査機関に対して違法な取り調べを行わないよう要請した経験はあります。 その点からも、過酷な状態にある被疑者・被告人と、弁護人との間の接見交通権は絶対的に保障されるべきなのです」
根絶されていない“違法な取調べ”
福原弁護士は、「違法な取調べ」の典型的なものとして、「被疑者と弁護人との信頼関係を破壊するような言動」が挙げられるという。 福原弁護士:「取調官が被疑者・被告人に対し、弁護士が被疑者・被告人に行ったアドバイスの内容を否定するようなことを吹き込もうとするケースがみられました。 特に挙げられる例といえば、『黙秘権の行使を妨害する取調べ』です。 被疑者・被告人が被疑事実を否認している場合、たいていの弁護人は、完全黙秘をアドバイスすることが多くなっています。 その場合に、取調べ担当官がたとえば、『弁護士はそう言っているかもしれないが、あなたのことはあなた自身できちんと考えて話した方がいい』『その弁護士はあなたのために言っているわけじゃない』『あなたがずっと黙っていたとしても、結局罪は罪だ』などということがあります。 そのような取り調べを受け終えた被疑者・被告人は、弁護人に対し『どっちの話が正しいんですか』と疑問を抱く場面も想定されます。 そういう場合に、弁護人が『私こそがあなたの味方です』と明確に示さなければ、被疑者・被告人が捜査官のペースに飲み込まれてしまうリスクがあります。 しかも、弁護人は収容施設の中で何が起きているのかわかりません。起訴前の段階では捜査資料等がまったく開示されないうえ、逮捕・勾留下で弁護人が取調べに同席することもほとんど認められていません。 こういったことを考慮すれば、弁護人が接見交通の際に事実確認、スケジュール調整等の被疑者・被告人と弁護人との間の円滑なコミュニケーションの実効性を高めるためにスマートフォンを使用することも、接見交通に必要不可欠な行為として保障されるべきです」