「冤罪のリスクも…」警察が弁護士に“被疑者との接見”で「スマホ使用」を禁止 “他人ごと”ではない「接見交通権・秘密交通権侵害」見逃されがちな問題
弁護人が被疑者の証拠隠滅行為に加担した「ルフィ事件」との違いは?
とはいえ、スマートフォンを持ち込むことによって、被疑者と外部の者との連絡が可能となり、証拠隠滅の恐れがあることは否定できない。 記憶に新しいのが「ルフィ事件」である。フィリピンから特殊詐欺事件を指示したとして窃盗容疑で逮捕された被疑者が警視庁原宿警察署に勾留中、接見に訪れた弁護士が、携帯電話を通じ、被疑者と、外部の特殊詐欺グループ関係者とみられる者とをビデオ通話させていたことが発覚した。弁護士が証拠隠滅行為に加担していたことになる。 本件のような、証拠隠滅のおそれが乏しいケースはともかく、一般論としては、証拠隠滅のおそれがある場合にスマートフォンの持込を制限することも「必要な措置」(刑事訴訟法39条2項)として認めるべきではないかとも思える。 この点について、福原弁護士は、ルフィ事件のケースは「被疑者・被告人と弁護人との接見交通権とは本質的に異なる問題」「法解釈上、弁護人のスマートフォン使用を禁止することは可能だったことに注意を要する」と指摘する。 福原弁護士:「被疑者・被告人と弁護人との接見交通権・秘密交通権は、被疑者・被告人の人権・防御の利益を守るための最低限の権利であり、憲法上保障されている『弁護人依頼権』(憲法34条後段、憲法37条)の実効性を高めるべきものです。したがって、基本的に制約されるべきではありません。 これに対し、ルフィ事件のようなケースは本質的に異なり、被疑者・被告人と『弁護人以外の者』との外部交通の問題と考えるべきです。 弁護人以外との接見交通・外部交通は、法律上、逃亡や罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるときは認められません(刑事訴訟法81条、刑事収容施設法115条但書参照)。 ルフィ事件では、『罪証隠滅のおそれ』があることを理由に、弁護人以外との接見禁止決定がなされていました(刑事訴訟法81条)。 その状況下で、弁護人が被疑者・被告人と接見の際にスマートフォンを用いて外部者との連絡を直接仲介し、証拠隠滅の指示を出すような行為は、違法な外部交通にあたり、それに弁護人が加担したと捉えるべきものです(【図表2】参照)。 ルフィ事件では、犯人グループがフィリピンの入国管理局の収容所から外部へ携帯電話で指示を出していました。 その特殊性にかんがみ、あくまでも『共犯者等との連絡による罪証隠滅を防ぐ手段』として、弁護人のスマートフォン使用を禁じる措置も、刑事訴訟法39条2項や刑事収容施設法等現行法規に則って適切に行われてしかるべき場面だったと考えられます」